水産振興へ沖縄とパラオ連携 覚書締結、教育や文化交流も

 沖縄県とパラオ共和国は26日、友好関係の強化に関する覚書(MOU)を締結した。同日、那覇市のザ・ナハテラスで締結式があり、玉城デニー知事と現地にいる同国のグスタフ・アイタロー国務大臣がオンラインを介して覚書文書への署名を行った。県が分野を問わない包括的なMOUを他国と結ぶのは初めて。今後は双方が有する技術や人材、資源などを活用し、島しょ地域の共通課題の解決に向けて協議する。

 パラオは自国の沖合漁業の発展に向け取り組みを強化しており、これまでも同国の漁業者は海洋特性が似た沖縄をたびたび訪問し、技術指導を受けている。今年7月にも漁業者らが伊良部漁業協同組合の指導の下、漁船を用いたカツオの一本釣りなどの漁労技術のほか、漁法や漁具メンテナンス、疑似餌の作り方などを学んだ。

 一方で、水産資源が豊富なパラオは環境や資源の保護を目的に、同国の排他的経済水域(EEZ)の20%に限って協定を締結した外国籍の漁船の操業を認めており、日本の漁業者の中では沖縄が唯一、同水域内でマグロはえ縄漁を行っている。

 MOUについては沖縄の水産技術を導入することでパラオの水産振興を図るほか、県内の漁船がパラオ水域で継続的に操業できるよう、2019年から両国間で締結に向けて調整が進められてきた。今後は協議の上で協働分野を定め、合意に至った分野については個別ワーキングチームを設置して具体的な取り組みを開始する。

 玉城知事は農業や水産業などの技術交流だけでなく、教育や福祉、文化振興などの面でも密な交流が期待できると強調。「アジア太平洋地域の平和と繁栄に向けて未来志向の取り組みを広げたい」と述べた。

 アイタロー大臣は、戦前パラオには1万3千人の県出身者が在住し、同国の発展に貢献したと振り返った。覚書は歴史的、文化的な絆の上に成り立ち、友好関係を強化するものであるとし、「相互に恩恵を与え合い、知識を高める機会にしたい」と意気込んだ。 同席したスランゲル・ウィップス大統領も「日本と沖縄からさまざまな分野の専門性と知識を学ぶことで、パラオ経済のさらなる発展につなげたい」と謝意を述べた。 (当銘千絵)

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