「日本維新の会」の代表選は、新しいスタイルになり得るか?

国政政党「日本維新の会」の代表選(8月27日投開票)が行われています。結党以来初めてとなる代表選は、党所属の国会議員・地方議員も合わせた586人の特別党員と全国で1万9293人の一般党員が1票ずつ投じて決定されます。

この選挙で、他の国政政党の代表選(自由民主党は総裁選となるなど、各党によって呼び名は違いがあります)と異なるのは、議員などの特別党員と一般党員の投票の重みが全く同じであり、数では特別党員より一般党員の方が圧倒的に多いということです。       

「日本維新の会」は結党以来、本拠は大阪府ですが、その隣の兵庫県でも最近、勢力を増しています。兵庫県では昨秋の衆院選で比例復活を含め9人が当選し、今年7月の参院選選挙区・比例代表ともに1人当選したことで、国会議員13人、地方議員は47人が兵庫維新の会に在籍しています。その兵庫県の中心である神戸市で行われた街頭演説会の様子をお伝えします。

21日の夕方。神戸市中央区の元町「大丸前」で街頭演説会は行われ、足立康史国会議員団政調会長、馬場伸幸共同代表、梅村みずほ参議院議員の3氏が街宣車に上がりました。各々15分ずつ時間を割り当てられての演説。お互いの仲のよしあしを言い合ったり、党内の改革を訴えたり、自民党に代わる責任政党になることを宣言したりするなど、各々の個性の出た演説会でした。

この神戸市の元町「大丸前」は、いつの選挙でも神戸市のみならず、兵庫県の選挙演説のメッカといえる場所なのですが、7月に行われた参院選の時の維新候補の演説と比べると人だかりは決して多くはありません。

街頭演説している3人に対して、投票できるのは「日本維新の会」の党員だけですから人出が少ないのは無理もありません。街頭演説で訴えかけつつも、「代表選の」有権者に向けてどれだけ訴えられているのか、全く未知数であるというのが通常の選挙と最も大きな違う点です。街頭演説の場にいる方でも党員資格がない方にとっては他人事になってしまう、というのが今回の「日本維新の会」の代表選です。

実は過去に今回のような形の代表選が行われようとしたことはあります。直近では、「日本維新の会」の前身にあたる「維新の党」が2015年の秋に予定していた代表選です。「党員も議員も同じ一票での初の代表選」をうたい文句の代表選のポスターを貼った街宣車などを、近畿圏を中心に各地で目にしました。この時は結局、党内が大阪系を中心にした勢力とそれ以外の権力争いの場となり、選挙前に党が分裂することになって代表選は行われませんでした。そして、その時に「維新の党」で行われようとしていた幻の方式で実施されているのが、今回の「日本維新の会」の代表選なのです。

他の国政政党の代表の選出方法と今回の「日本維新の会」との最も大きな違いは議員職にある者の得票の重さです。例えば公明党は、代表を党の全国大会で選出する方式をとっており、全国大会までに選挙権を持つ代議員の選任が行われます。国会議員10人以上の推薦を得ると公明党の代表選に立候補することができますが、1964年の結党以来一度も複数候補が出たことはありません。また、共産党の代表者の地位に位置付けられている「日本共産党中央委員会幹部会委員長(日本共産党委員長)」の選出は、党大会に出席する約800人の代議員が選挙で選んだ中央委員で組織される中央委員会の総会で行われます。いずれも、地方から全国へピラミッド式に討議・選出を繰り返しての代議員による選出方式を採用しており「党員は1人1票」というスタイルではありません。

また、昨年「総裁選」があった自由民主党(呼称は「代表」ではなく「総裁」)、「代表選」があった立憲民主党はともに、地方議員や一般党員と比べて国会議員など国政にかかわる者の1票を重くしてポイントをドント方式で配分する方法の選挙になっており、今回の日本維新の会代表選のような特別党員・一般党員に関係なく「1人1票」の方式とは異なります。

いずれにせよ、党員でさえあれば代表選の投票権があるため、立候補者側からすると通常の選挙と比べるとターゲットアプローチしにくいのが今回の「日本維新の会」の代表選です。どこの政党の代表選でも条件は同じなのですが、総務省の「中央選挙管理会」のような中立の選挙管理を行う機関がなく、自党の中で「選挙管理」を行うことで、不正の可能性を指摘される事案も今回は報じられています。 しかし、これはひとつの国政政党が党内部で行っていることとらえると、党の外の者がその是非について口をはさむものでないのかもしれません。結果が出るまでまもなくですが、新しい顔を選ぶ代表選としてどのような評価になるか、判断できるのは少し先になりそうです。(オフィス・シュンキ)

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