有田芳生さん講演「統一教会とは何か 安倍元首相暗殺事件の背景」

安倍元首相が銃撃され死亡した事件をめぐり、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)と政治家との関係がクローズアップされている。ジャーナリストとして統一教会問題を30年以上にわたって取材している前参院議員の有田芳生さんが8月19日、大阪市内で「統一教会とは何か」と題して講演した。(新聞うずみ火編集部)

有田さんは「統一教会と政治の問題がこれほど大きく報道されたのは、統一教会68年の歴史の中で初めて」と切り出し、その歴史について説明した。

「これ以上、空白を作ってはいけない」と訴える有田さん

文鮮明教祖は北朝鮮生まれで、1954年に韓国で宗教団体としての「世界キリスト教統一神霊協会」を結成した。韓国の統一教会信者が日本に密航し、布教を始めたのが58年。64年には東京都の認証を得て正式に宗教団体として活動するようになったという。

さらに、文鮮明氏が68年に作ったのが「国際勝共連合」で、「岸信介元首相が名誉役員、名誉会長にA級戦犯容疑者だった笹川良一氏、日本統一協会の初代会長である久保木修己氏が国際勝共連合の会長を務めたのです」

捜査当局が国際勝共連合、統一教会に監視の目を光らす中で起きたのが、87年の朝日新聞阪神支局襲撃事件だった。

朝日新聞阪神支局襲撃事件から35年になる=兵庫県西宮市

「赤報隊を名乗る男に散弾銃で襲われ、当時29歳だった小尻知博記者が命を奪われた。赤報隊による事件は『116号事件』として警察の捜査の対象になった。警視庁が作った資料には統一教会の信者の名前や本籍地、住所、活動歴、身体的特徴、猟銃の有無などが書かれていた。宗教団体の顔としての統一教会、裏舞台としての政治組織としての国際勝共連合、それ以外に非公然の軍事部隊があり、警視庁は捜査の対象にしていたのです」

95年の地下鉄サリン事件で警察幹部と接触を持つようになった有田さん。その年の秋、統一教会についてのレクチャーを求められたという。

「集まっていたのは全国の公安警察の責任者。終了後、警察幹部は『オウム真理教の次は統一教会を摘発する』と明確に言った。『経済問題で入っていくのだ』と。10年後、警察幹部と久しぶりに会い、『何も動かなかったじゃないですか』と尋ねると、こう言ったのです。『政治の力だよ。政治の圧力だ』と」

オウム事件以降、テレビ新聞も週刊誌も統一教会の報道をしなくなった。有田さんが言う「空白の30年間」で統一教会は全くノーマークになった。その間に、「国会議員だけではなく地方議員も非常に中にまで入り込んでいる」と指摘する。

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安倍元首相と統一教会の関係について、有田さんは「安倍さんも矛盾を抱えながら、結果的に統一教会の広告塔になってしまったのが引き金となって事件につながったというのが結論だ」と語った。

「安倍さんが自民党幹事長時代、『統一教会の人たちが接触してくるでしょう』と尋ねたら、認めた上で『会わないようにしている』と語ったことがあります。母の洋子さんが『統一教会と付き合うな』とアドバイスしていたのです」

安倍氏は統一教会の関連団体UPFの昨年9月12日の大集会にビデオメッセージを寄せた=PeacelinkTVより

しかし「空白の30年」で、統一教会はどんどん浸透していた。「安倍さんは自民党総裁になり、総理になった。選挙を勝たなければいけないというような使命感も含めてだろうが、出さなかった祝電を出し始めた。昨年9月には『天宙平和連合』(UPF)の集会に顔も名前も出してビデオメッセージを送った。トランプ前大統領と一緒に」

有田さんは「安倍さんは、最後は深く関わってしまい、残念な事件が起きてしまった」と述べ、こう訴えた。「まだまだこの問題は続く。次のまた空白とならないように『膿』を出し切らなければならない」

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