大量の氷散布で勢力弱く?「台風制御」課題を議論、進路変わる可能性も 横浜国大

台風制御の在り方や課題を巡って意見を交えたシンポジウム

 台風研究の最前線を紹介するオンラインのシンポジウムが28日に行われた。台風の被害を減らすため、人工的に勢力を弱める「台風制御」という長期的な目標の達成に向け、研究者らが多方面から課題を探った。

 シンポは、横浜国立大が昨年10月に設立した台風科学技術研究センター(TRC)の主催。TRCは台風制御や台風発電といった野心的な目標を掲げ、他の研究機関や民間と連携して実現の道を探っている。

 台風制御では、地球温暖化で台風が強まるとの予測を踏まえ、大量の氷を無人航空機で散布して勢力を低下させるといった手法が構想されている。

 シンポでは、実現には技術面の向上が不可欠な一方で、倫理的、社会的な課題があるとの認識を共有。同大の笹岡愛美准教授(法学)は「自然に介入することの是非に加え、台風の進路が変わることによる他地域への影響も考えられる」とした上で、「散布する物質の安全性など基準をどう組み立てていくのか」と問題提起した。元気象庁長官の橋田俊彦さんは「研究開発には期待するが、社会のありように関わる。技術と倫理の両面で見ていく必要がある」との認識を示した。

 センター長の筆保弘徳教授は「皆さんとしっかりコミュニケーションを取りながら進めていきたい」と述べた。進路予報の現状や研究者が開発した台風関連のサイトも紹介された。

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