NISA恒久化、改革の背景と懸念材料−−非課税期間と投資上限はどう変わるのか?

金融庁は2023年度税制改正要望で、NISA(少額投資非課税制度)の恒久化と非課税期間の無期限化を求める方針を固めました。長期の積み立てに適した商品を対象に「成長投資枠(仮称)」を導入し、年間の投資枠を拡大することも求めるとしました。


NISAを資産所得倍増プランの柱に

岸田政権は「貯蓄から投資」を掲げ、年内にも「資産所得倍増プラン」を策定します。プランの柱としてNISAの抜本的拡充を行う予定で与党の税制調査会を中心に議論を進め、具体策を出す方針です。NISAは一定の条件を満たすと、売却益や配当金などへの金融所得課税約20%が一定期間免除される仕組みです。

「一般NISA」は2028年までの間、年間120万円の投資を上限に最長5年間、非課税措置を受けられます。また、積み立て型の「つみたてNISA」は、金融庁が選定した投資信託商品に2042年まで投資でき、年間40万円を上限に最長20年間、非課税になります。金融庁は制度の恒久化や非課税期間の無期限化を求めることにしました。

非課税限度額についても、一般NISA(現状、最大600万円)と、つみたてNISA(同800万円)で拡大を要望する予定です。つみたてNISAを念頭に、非課税限度額の一部に「成長投資枠」を設け、上場企業の株式などに投資できるようにすることも求めます。

子ども名義の口座を開設して投資をする「ジュニアNISA」が2023年末で廃止されるため、つみたてNISAの対象年齢を現在の20歳以上から、未成年者まで拡大することも要求する予定です。また、子や孫らに教育の資金を贈与した際、一定額を非課税にする優遇措置について、つみたてNISAなどでの運用損失などを贈与税の課税対象外とするなどの措置も検討しています。「老後2000万円問題」 への関心も根強くあり、日本人の投資を促進する取り組みとして注目されています。

NISA改革の背景と懸念材料

今回のNISAの改革の背景にあるのは岸田首相の掲げる「資産所得倍増プラン」です。日本の個人現預金は1,000兆円を超えていて、これを投資に振り向けることで家計資産の拡大へとする考えのようです。改正要望では非課税期間を無期限とし、投資枠を広げることを求めます。この取り組みにより、長期投資を促したい意図がうかがえます。

但し、懸念材料もあります。先日、自民党の宮沢洋一税制調査会長は、株式の配当や売買にかかる金融所得課税に関し「議論はしないといけない」と述べられています。NISAを拡充する反面、年間の所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる「1億円の壁」を改めて問題視するなど、課税強化の可能性もあります。

現在はNISAの恒久化について金融庁が要望しているだけの状態であり、今後議論される予定です。NISAで人気の銘柄は商船三井(9104)、武田薬品(4502)、JT(2914)、日本郵船(9101)などの高配当株や、すかいらーく(3197)やマクドナルド(2702)の優待銘柄です。そんな中で、日経ダブルインバース (1357)も人気があります。

前々回の記事にも掲載しましたが、金融庁はレバレッジ型・インバース型ETF等は、主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品であり、投資経験が少ない個人投資家の方が資産形成のためにこのようなETF等を投資対象とする際には、取引の仕組みや内容を十分理解し、取引に伴うリスク・コストを十分に認識することが重要、と警鐘しています。

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