県内外彫刻家 矢掛産石材でアート 9月8日まで公開制作 展示も予定

宮内さん(左から3人目)が作品にする巨石を昔ながらの技法で割る体験をする彫刻家仲間

 岡山県内外の彫刻家が矢掛町産の石材を使い作品を公開制作するアートイベント「ザ・のみぎりズム2022」が、矢掛町中心部で行われている。江戸時代の宿場町の風情が残る町並みから「カーン、カーン」と、のみで石をたたく音が響いている。公開制作は9月8日までで、完成した作品は同10日から本陣通りで展示する。

 制作過程を地域住民や観光客らに披露するだけでなく、彫刻家が作品完成までの2週間、矢掛に滞在することも特徴。16年に初めて開催され、矢掛が気に入り、移住した彫刻家が出るなど好評で、2回目を企画した。

 今回は新進気鋭の20代の若手から海外でも評価の高い60代のベテランまで、山形や沖縄県など全国から9人が参加している。旧山陽道沿いの特設会場と、やかげ町家交流館の2カ所で27日に制作を開始。作品テーマは「座」で、町内で産出する性質の異なる石2種を、それぞれ石材会社が提供した。

 イベント名の一部にある「のみぎり」は、石をのみで彫るという意味。愛媛県から参加した宮内宏さん(65)は、重量が3.5トンある今回最大の石を、昔ながらの技法で割った。石の表面に小さなくぼみを複数掘り、そのくぼみに豆矢と呼ばれる親指大の鉄のくさびを打ち込んだ。巨石が割れると、会場からどよめきが起きていた。

 彫刻家は制作中、観光客に作品の趣旨を説明したり、石材会社や仲間と彫刻技術について議論したりしている。普段は東京で活動する初参加の巾崎知佳さん(29)は「矢掛の自然や文化を感じ取り、作品に反映させたい。みなさんとの交流を通して、石彫の魅力も発信したい」と話していた。

 会場には、のみぎり体験コーナーやカフェもある。9月8日午後6時から参加自由の完成披露会。展示は同10~30日の予定。

 問い合わせは実行委事務局の、やかげDMO(0866―83―0001)。

70センチの立方体からカエルの形を掘り出すという沖縄県から参加の伊藤銀さん。鎚(つち)とのみを使い人力だけで石を削っている

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