<金口木舌>名優・名作を語り継ぐ

 20年前、戦後の沖縄芝居で一時代を築いた人気劇団が幕を閉じた。女性だけで演じた「乙姫劇団」だ。1949年に発足し、2002年に閉団するまで50年余、数多くのファンを魅了した

▼乙姫劇団で間好子さん、上間初枝さん、兼城道子さんと共に四大スターと呼ばれた名優の大城光子さんが他界した。四大スター全員が旅立ったことになる

▼伝統芸能を担当していた頃、大城さんが出演した名作歌劇「与那国ションガネー」を取材した。与那国島で暮らす娘を演じた大城さん

▼身分の違う男性と恋に落ち、子どもを産みながらも、わが子の将来を思い、断腸の思いで子どもと別れる女性の悲哀を表現した。心の奥からにじみ出る熱演に引き込まれ、取材しながら思わず涙があふれた

▼うちなーぐちを使える人が減り、娯楽は多様化するなど、沖縄芝居を次代へ継ぐための課題は多い。しかし、大城さんたちの世代から指導を受けた役者らが今も活躍し、若手も育成する。名優たちの演技を語り継ぎ、名作を次代へ継承する動きに注目したい。

© 株式会社琉球新報社