秋の味覚サツマイモに不作の危機? 福井含む27都道県で基腐病確認、鹿児島では2021年の収穫量が過去最低

基腐病に感染したサツマイモ(中央、鹿児島県提供)

 サツマイモの立ち枯れや腐敗を引き起こす「基腐病(もとぐされびょう)」の被害が広がっている。カビ(糸状菌)によって発症し、日本では2018年に沖縄県で初めて確認されて以降、福井県を含む27都道県に拡大した。県内は大野市で昨年1件確認されて以降報告がないが、県農業試験場は「まん延を防ぐためにも、発見した場合は早期に連絡してほしい」と注意を呼びかけている。

⇒大雨災害で川濁り続けアユ釣りに打撃「なすすべがない」

 基腐病は発症すると葉が黄色や紫色に、茎の根元は黒色に変色して生育不良になり、イモが腐敗する。雨水のほか農機具や靴の裏などについた土を介して菌が広がる。つるや茎についた菌は越冬するため、ほ場に残っていると翌年の発生につながる。農薬などによる完全な防除は難しいとされ、行政や民間は菌を「持ち込まない・増やさない・残さない」を柱に対策を進めている。

 農林水産省によると、サツマイモの作付面積が全国1位の鹿児島県では、21年の収穫量が前年比約2万4千トン減の約19万トンと過去最低だった。同県によると、21年に1株でも症状がみられた畑は同県全体の75%に上り、基腐病が収穫量減に大きく影響したとみている。

 福井県内では、21年7月に大野市内の園芸農家が栽培する約500平方メートルのほ場の一部で、サツマイモの茎の根元が黒色に変色する症状が初確認された。愛知県の業者から購入した鹿児島県産の苗だったという。福井県農業試験場は同8月、基腐病の発生を知らせる「特殊報」を発表した。

 同試験場の担当者は「運よく発生が見つかり、水際で感染を止められたが、家庭菜園などで出てしまうと一気に広まってしまう可能性がある。少しでも症状が見られたら連絡してほしい」と話している。

 県内では、あわら市北潟の富津地区で特産「とみつ金時」を生産しており、今月下旬から収穫が始まっている。生産者でつくる富津甘藷(かんしょ)生産組合の杉田一彦組合長は「今のところ、とみつ金時に基腐病は発生していない」と説明。「苗はウイルスフリーのものを使っており、一部は前年に収穫したものを種芋として使っているので心配は少ない」と話す。

 全国の主産地では加工品の生産にも影響が出ている。鹿児島県の浜田酒造(いちき串木野市)は10月、本格焼酎全品の価格を14年ぶりに値上げする。販売休止中の商品もあり、担当者は「供給不足でイモの争奪戦になっている」と嘆く。

 サツマイモを使ったスイーツは人気が高いことから、富津甘藷生産組合の杉田組合長は「万一発生した場合の影響は大きい。十分に注意を払って生産していきたい」と気を引き締めている。

© 株式会社福井新聞社