カエルやエビ“救出作戦” 埋め立て直前、池の生き物守れ 長崎大・文教キャンパス

生き物の救出作業に取り組むボランティア=長崎大

 間もなく埋め立てられる長崎大文教キャンパス(長崎市文教町)の池で、大庭伸也同大教育学部准教授らがカエルやエビなど生き物の救出作戦を展開中だ。「豊かな生き物が息づく身近で貴重な生態系。一つでも多くの命を救いたい」と奮闘している。
 この池は教育学部棟と環境科学部棟の間にあり、約120平方メートル。特に名称はなく、建造時期も不明。同大は池の周辺を広場にして有効活用しようと、昨年度埋め立てを決定した。9月5日に水抜きを行う予定。

救出したツチガエル。オタマジャクシから成体へと成長途上

 池の中央部には水草が生い茂り、多様な生き物のすみかとなってきた。大庭准教授によると、県の準絶滅危惧種のツチガエルのほか、トンボ類の幼生(ヤゴ)、エビ類、小型の淡水魚類が生息している。これらが死滅するのは忍びないと、同准教授が周囲に呼びかけ、8月29日に救出作業を開始した。
 初日は河端雄毅水産学部准教授や学生ボランティアら10人ほどが協力。膝近くまで水に漬かり、手網を水草の中に探り入れて生き物を採集。ツチガエルの成体254匹、オタマジャクシ276匹、トゲナシヌマエビ(推定)1253匹、ヤゴ49匹、淡水魚のモツゴ3匹を捕らえた。また、メダカに似た淡水魚で特定外来生物のカダヤシも490匹見つかった。

救出したギンヤンマのヤゴ

 この池を教育や研究に活用してきた大庭、河端両准教授は、埋め立てによる生態系の喪失を残念がっている。「生きたカエルやエビにここで初めて触ったという学生がいた。理科教師を目指す学生を育てるのにいい場所だった」(大庭准教授)。「生き物の行動を捉えるハイスピードカメラを仕掛けることができた。観察から仮説を立てるという研究の初期段階を学生に学ばせるのにちょうどよかった」(河端准教授)。
 救出作業は水抜き直前まで続ける。カダヤシ以外の在来種は、同大教育学部付属小やキャンパス内の他の池に移す。カダヤシは池の外の生態系に影響を与えないように、大庭准教授が引き取る。同准教授は「私が不在の時間帯でも、ボランティアで採集救出をしてくれる方、大歓迎です」と呼びかけている。


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