【F1第15戦木曜会見】フェラーリへの批判は「少し厳しすぎる」とサインツ。勝利もミスも大きく取り上げられる環境に適応

 F1第15戦オランダGPの舞台となるザントフォールトは、最大斜度が18度に達する2カ所のバンクで有名だ。昨年とはまったく違うマシンとタイヤで、ドライバーたちはここをどう攻略するのだろう。

ランス・ストロール(アストンマーティン):あのバンクは、かなりユニークなコーナーだ。走行ラインは、普通のものとは全然違う。なのでスタート直後は、特に面白い展開になると思う。バンクを利用して高く上がったり、逆に低い位置から攻めたりできるからね。

 そんなストロールの意見に、サインツは基本的には同意しつつ、「自由なラインを取れるのはターン3だけだ」という。

カルロス・サインツ(フェラーリ):全員がこのコース初体験だった昨年は、本当に面白かった。3回のフリー走行の間、みんながターン3へのアプローチを少しずつ変えて、いろんなトライをしていた。そしてFP3が終わって予選になったら、突然、全員が超ワイドに広がって、自由なラインを取り始めた。今後こういうコーナーが、もっと増えたらいいなと思っている。今年はアレックス(アレクサンダー・アルボン/ウイリアムズ)だけが初めてだから、すべてを学ばなければならない。そこはちょっと同情するよ。

ランド・ノリス(マクラーレン):特に付け加えることはないかな。確かにみんなが言っているようにいいコーナーだけど、僕はとにかく白線の内側を走る。それだけだ。

2022年F1第15戦オランダGP ランド・ノリス(マクラーレン)

 もうひとつのバンクコーナーである最終コーナーは、昨年は速度が上がりすぎて危険だからという理由で、DRSの使用は禁じられていた。それが今年、試験的に解禁される。しかしドライバーたちは、積極的にトライするつもりはないようだ。

ノリス:まず試さないと思う。僕とダニエル(・リカルド)は、どちらが先にDRSを使うか、コイントスで勝負しようと思っているくらいだし(笑)。正直、あまり自信はないね。まずはどんな走りができるか、見てみるつもりだ。それに今年のクルマは、とにかくスリップストリームの効果が大幅に減っている。スパ・フランコルシャンが典型的だったけど、前のクルマに近づけても、そこからなかなか抜けなかった。それにここはただでさえ、抜きにくいサーキットだからね。最終コーナーでDRSを使わせることも必要かもしれないけど、それ以前に最も大きな変更が必要なのはターン1だと思う。誰かを抜くには、ブレーキングゾーンが狭すぎるからね。

 一方でジョージ・ラッセル(メルセデス)は、「オーバーテイクは簡単だ」と、正反対の意見を述べた。

ラッセル:オーバーテイクは簡単だと思う。それに、DRSの拡張もおもしろいと思う。少なくともシミュレーターでは、簡単だと感じたね。もちろん満タンかどうか、そして古いタイヤで他のクルマについて行く場合でも、かなり違うかもしれない。でも少なくとも昨年よりは、簡単なはずだ。

2022年F1第15戦オランダGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)

 会見でもうひとつ話題に上がったのが、今季のフェラーリの戦闘力、そしてスパで再び起きた戦略ミスについてだった。

Q:シーズンを通してフェラーリは、レッドブルから徐々に引き離されています。今季ここまでフェラーリは4勝に対して、レッドブルは10勝。この2チームの決定的な違いは何だと思いますか? フェラーリにはタイトルを獲得する能力が、まだないということでしょうか?
サインツ:確かに彼らはレースごとに、少しずつ手強くなってる。でもオーストリアでは僕らがかなりのペース差を築いていたし、フランスでは19番手から追い上げてペレス追い抜いた。どちらもほんの2、3レース前、それほど昔のことではないよね。確かにスパは、10回レースをしても全部彼らが勝つと思う。なぜならあのサーキットにもっとも適したパッケージを持っているのが、レッドブルだからだ。でも違う特性のコースなら、僕らはもっとうまくやれるはずだ。スパの前までは、予選でも決勝でもコンマ1秒以内に収まっていたのに、あそこで突然コンマ8秒差になった。もしかしたら僕は楽観的すぎるのかもしれないし、もうそんなことは起きないと期待しすぎているのかもしれない。でもそう感じている。もしかしたら今週末、僕が完全に間違っていると証明されるのかな。そうは思いたくないけど。

Q:フェラーリの戦略、そして戦術の両方が、スパで再び疑問視されていました。フェラーリ内では、ミスを恐れて慎重に判断し過ぎているという感じなのでしょうか?
サインツ:もっと勇敢に行くべきか、慎重になるべきか、一般化するのは非常に難しいと思う。個別に分析する必要があるはずだからね。そして結果や結論がそれぞれ異なることも、確かだと思う。

 一方でフェラーリへの批判は、少し厳しすぎると思う。マクラーレンやトロロッソ、ルノーにいたときは、戦略上の大きなミスがあっても、誰もそれを指摘したり批判したり、フェラーリほど貶めたりしなかった。フェラーリでは、すべてが大きく見える。勝利はより大きく、ミスはより大きく。そこがまさにフェラーリだし、僕自身が適応しているものだ。

 ただ戦略の話に戻ると、ひとつひとつを丁寧に分析して、もっとうまくやれたはずだと考えることが重要だと思う。そしてまさにミスをするたびに、僕らがやっていることだよ。

2022年F1第15戦オランダGP木曜会見 左から角田裕毅(アルファタウリ)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、ランス・ストロール(アストンマーティン)、カルロス・サインツ(フェラーリ)、ランド・ノリス(マクラーレン)

 勝っても負けても、フェラーリはことさらにクローズアップされる。それは確かにその通りであろう。それにしても今季のフェラーリは、ドタバタが過ぎる気がする。サインツもおそらくそう感じているのではないかと思うが、チーム批判的な言い方は周到に避けつつ、ある程度納得できるコメントにまとめていた。そんな発信力も、一流ドライバーに欠かせない能力のひとつなのだろう。

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