盆以降コロナ感染者急増…対馬の現状語る 医療崩壊手前「限られた資源で対応」

「医療崩壊手前で何とか持ちこたえている」と話す八坂院長=県対馬病院

 新型コロナウイルス流行第7波が離島でも猛威を振るっている。長崎県対馬市ではお盆以降、一時は連日100人を超す感染者が確認され、対馬医療圏の病床使用率は9割を超えた。県対馬病院の八坂貴宏院長に島内の現状などを聞いた。

 -8月、県内離島で対馬の感染者数が突出した。要因をどう見ているか。
 あくまでも推測だが、お盆の帰省客の比率が他の離島より高かったのではないか。対馬は福岡との往来が多く、以前から感染者が多くなるとみていた。
 病院で一番困っているのが、市内で相次ぐ高齢者施設でのクラスター(感染者集団)。帰省客から島内の家庭に、家庭から高齢者に、高齢者からデイサービスや施設に(という流れで)拡大したとみられる。施設などで感染した高齢者が入院し、病床使用率が高まっているのが現状だ。

 -高い病床使用率による医療への影響は。
 検診やリハビリ、延期可能な入院などは止めているものの、救急の受け入れや緊急性のある入院、手術などは全てできている。必要な医療ができずに命を落とす人が増えると「医療崩壊」だと思うが、そういった状況にはなってない。
 コロナ病床は入退院の調整や宿泊療養施設とのやりとりで、使用率100%を超えないようにしている。だが、看護師が少ない上、家庭内などで感染して人手が足りない。崩壊手前で何とか持ちこたえている。

 -離島ならではの苦労や危機感は。
 海に囲まれ、本土と隔絶されているので、急速に感染者が増えた時、限られた医療スタッフや設備などの「(今)ある資源」で全て対応しなくてはならない。人工心肺装置ECMO(エクモ)などの機材もなく、重症者が出た場合、島で治療が完結できないので、島外に搬送しなければならない大変さもある。

 -一部の利用者による、医療従事者への暴力的な言動があると聞く。
 軽症なのに夕方に来院し、「今から検査しろ」と強要したり、夜中に電話で「検査しないなら、救急車で病院に行く」と脅したりする人がいる。余裕がない時は精神的にきつい。本当にやめてほしい。スタッフの心の問題も、ある意味で「医療崩壊」につながる。焦りがあるのかもしれないが、落ち着いて冷静になってほしい。

 -市民に伝えたいことは。
 マスク、手洗い、手指の消毒など日常の感染予防策を心がけてほしい。自分が感染しないように、あるいは人に感染させないようにする努力をすべきではないかと思う。ただ、医療従事者が何度言ってもなかなか変わらないもどかしさがある。


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