芸術家・岡本太郎(1911~96)の芸術人生を振り返る「展覧会 岡本太郎」が大阪市北区の大阪中之島美術館で開かれている。これまでにない最大級の回顧展は10月2日まで。(新聞うずみ火 矢野宏)
絵画を中心に彫刻、建築、家具と幅広い岡本太郎の芸術作品の中から約300点を年代順に六つの章にわけて紹介している。
「第1章 岡本太郎誕生――パリ時代」。岡本は1930年にパリへ留学。ピカソの作品に感動し、最先端だった前衛芸術などを10年間にわたって学ぶ。
「傷ましき腕」(1936年制作、49年再制作)。パリ時代の作品は戦火で焼失。戦後、岡本太郎が再制作した
「コントルポアン」と名付けられた作品(35年制作、54年再制作)
初公開されたパリ時代の岡本太郎の作品
作品に岡本太郎の署名が残っていたという
パリ時代の作品は、持ち帰った東京で空襲の惨禍ですべて焼失したと言われてい。だたが、数年前にパリのごみ箱の中から三点の抽象画が見つかった。かすかに残っていた署名を筆跡鑑定したところ本人と推定され、初めて初公開された。
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40年に帰国した岡本は徴兵検査を受けて翌年に出征し、中国戦線を転戦した。当時、岡本は30歳。「自由主義者」のレッテルを貼られ、目をつけられていたという。この時に描かされたのが「師団長の肖像」(42年制作)だ。
岡本太郎が軍隊時代に描かされた「師団長の肖像」
今回、注目された作品の一つに「燃える人」(55年制作)がある。アメリカがビキニ環礁で水爆実験を行った際、被爆した第五福竜丸のイメージが結実した作品だ。核兵器のテーマは長年にわたって岡本をとらえ、東京・渋谷駅に展示されている長さ11メートルの巨大壁画「明日の神話」(68年制作)の中にも描かれている。
第五福竜丸をイメージしたと言われる「燃える人」
東京・渋谷駅に設置されている巨大壁画「明日の神話」
どちらが正面?
見ていると楽しい
「晩年の作」と言われる黒い目を強調した作品のほか、過去に描いた作品に上書きして描き替えた絵画など、来館者は熱心に見入っていた。
市内に住む50代の女性は「岡本太郎というと、70年万博の『太陽の塔』の制作者との認識しかなかったが、どの作品を見ても岡本太郎さんのあふれ続ける芸術への情念が感じられた」と語っていた。
最後に取り組んだと言われる作品「雷人」(95年制作)
「展覧会 岡本太郎」はこのあと、東京都美術館で10月18日~12月28日、愛知県美術館で2023年1月14日~3月14日まで開催される。