斜面地

 長崎市の友人の家は玄関が2階にあった。1階の友人の部屋には階段を下りていくことになる。どうしてかといえば、その家は急な斜面地に沿うように建っていたからだ。斜面地には平地にはない風景がある▲坂の街といえば長崎市のイメージが強いが、佐世保市も負けじと坂が多い。佐世保駅から国道を横切るとすぐに上り坂になる。しばらく坂を上り振り返ると、軍艦が浮かぶ基地の街ならではの風景が見える▲狭い坂道を歩いていると、空き地や空き家が目につく。佐世保市の2015年の調査では斜面地にある空き家は832軒に上った▲買い物に行くのも大変だし、緊急車両も入れない。こうした問題に向き合いながら、斜面地を生かしたまちづくりをしようと市民グループ「させぼ山手研究会」が今春、発足した▲研究会は佐世保駅に近い斜面地で、民家跡などの活用策の検討を始めた。先月、地域の住民らも参加してワークショップが開かれ、図書館やカラオケ、直売所など、いろんな活用法を出し合った▲斜面地では、雨に降られたら傘を差しかけたり、坂を上る途中の人を休憩させてやったりと、住民が支え合いながら生活していたという。今は見られなくなった光景かもしれないが、活用法を探す中で、地域の人たちが支え合える何かを見つけられるといい。(豊)

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