「大型投資で価値上げる」ハウステンボス・坂口克彦社長 PAGの事業拡大方針に期待

PAGによる大型投資などに「期待しかない」と語る坂口社長=佐世保市、ハウステンボス

 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が香港を拠点にする投資会社PAGへの全株式売却を決めた長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)。新たな資本傘下で営業は継続され、雇用も維持される見通しだ。HTBの坂口克彦社長は7日、長崎新聞社のインタビューに応じ、PAGは新たなアトラクションの導入やイベントへの投資でテーマパーク事業を拡大する方針であるとして、「HTBの強みを生かして大型投資をし、さらに成長させて価値を上げるということ。期待しかない」と語った。
 坂口社長は2019年、前社長の澤田秀雄氏(HIS会長)の後継として社長に就任。PAGはHTBに対して「高い成長性を有する企業」と評価を示しており、今回、PAG側からの要請で社長を続投することになった。これまで現場、顧客の知恵を生かす「組織経営」を掲げてきた。「顧客志向、社員のモチベーションを大切にしている。その体制は維持してほしいと言われた。評価していただきありがたい」と語る。
 当面、昨年10月からの中期経営計画に沿って運営する方針。「具体的な計画はこれからだが、(PAGと)一緒に仕事をしていくという認識。大型投資は3年後くらいになると思う。この1、2年は今の計画でやっていこうという感じだ」と展望する。
 HTBの22年3月中間連結決算は、営業利益が3億9200万円。新型コロナウイルスの感染拡大後は赤字決算が続いていたが、中間決算としては3年ぶりの黒字となった。入場者数は約106万9千人で、コロナ禍前の水準に近付いてきている。「客が戻ってきている。そして、プラスアルファの大きな投資をやろうとしている。投資会社は非上場の会社を買収して、価値を上げて上場して、利ざやを取る事業をしている。(HTBは)それに適合した」と話した。
 今月30日、新しい親会社の下で経営がスタートする。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致、株式上場…。本県、九州の観光、経済界の浮揚を担う今後の展開が注目される。

◎「まずは日本人客を増やす」 ハウステンボス・坂口克彦社長 一問一答

 佐世保市のハウステンボス(HTB)は30日、新たな親会社PAGの下で再出発する。HTBの坂口克彦社長に今後の経営などについて聞いた。

 -HTBの株式評価額は約1千億円。その評価をどう考えるか。
 PAGが魅力と考えているのは、本物のヨーロッパの街並み。敷地も広く、いろんなことができて、伸びしろがあるということ。よそにはまねができない強みがある。

 -売却について、前社長の澤田秀雄氏(HIS会長)の決断をどう思う。

PAG傘下での運営や雇用などについて語る坂口社長=佐世保市、ハウステンボス

 本人と直接話はしていないが、赤字からの再生を果たし、思い入れがあるテーマパーク。本当は手放したくなかったと思う。

 -PAGは大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社への投資実績がある。印象は。
 つぶれた会社を再生させるのではなく、HTBをさらに成長させようとしている。大型投資、大型広告でお客さんを増やす。私たち経営陣が全部代わったら不安だろうが、何度も言うが、期待しかない。まずはインバウンドではなく、日本人客を増やしたいと考えているようだ。

 -HTBの従業員数は約1200人。雇用、取引企業については。
 雇用については、維持ではなく、足りないから増やすという話。大型投資でよくなるイメージしかなく、社員には心配から安心、期待になるというメッセージを伝えた。取引業者は運命共同体と思っている。お客さんを増やして価値を上げる。レストラン、土産店などの売り上げは伸びると思う。

 -カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致については。
 計画には協力していく。ただ、駐車場の確保などの課題に対応し、相乗効果が出るようにしてほしい。

 -本県、九州の観光を牽引(けんいん)するテーマパーク。どう魅力を高めるか。
 ヨーロッパの街並みに、花と光の感動リゾートをコンセプトにして、その中で感動体験を味わってもらい、素の自分に戻れる空間にしたい。


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