教諭のハラスメント相談体制見直しへ 長崎市教委、パワハラ訴訟巡り

 長崎市内の公立学校に勤務していた男性教諭が同僚教諭からパワハラを受け、任用する市の対応が不十分だったとして市に損害賠償を求めた訴訟を巡り、市教委は7日の定例市議会教育厚生委員会で、教職員による相談への対応を見直す方針を明らかにした。従来、対応結果は相談者に口頭でのみ説明していたが、今後は書面で交付することなどを義務付け、原告側と和解する見通し。
 男性教諭は2021年、長崎地裁に提訴。訴状などによると、19年、生徒指導の対応を巡り同僚教諭から一方的に叱責(しっせき)されるなどのパワハラ行為を受け、校内の相談員に訴えたが相談体制が十分に機能していなかったとしている。
 市教委によると、現在、相談員の役割をする職員を各校に男女1人以上配置。相談員から報告を受けた管理職が該当職員に指導などを実施した上で、相談者には口頭で対応結果を伝えていた。また、校内での相談が難しい場合は市教委も対応できるが、原告側は現場に周知されていないと主張していた。
 市教委は今後、相談者に対応結果を書面で報告し、校内だけでなく市教委にも直接相談できる点を現場に周知する。校内研修を開催するよう各校に指導し、ハラスメントの実態把握や抑止力強化のため全職員を対象としたアンケートを定期的に実施するという。
 原告の代理人弁護士は、書面の交付を義務付けた点が珍しいとした上で「相談を受ける側にも緊張感が生まれる。実効性が増した」と評価。管理職の対応に不満があれば市教委に直接訴えられるとして「相談しても無駄だと思わないでほしい」と話した。
 学校運営に詳しい教育研究家の妹尾昌俊さん(43)は「(本県に限らず)教職員間のハラスメントを想定した対策がこれまで弱かったのでは。相談のつなぎ方を検証する必要がある」と指摘。神戸市で起きた教諭間のいじめ問題などを挙げ「先生への悪影響は子どもへの悪影響。特殊な事案と思わず、真剣に捉えてほしい」と語った。


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