負債1千万円未満の倒産、3カ月連続で減少、8月では過去15年間で2番目の少なさ

  2022年8月の負債1,000万円未満の企業倒産は24件(前年同月比42.8%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。8月としては、3年連続の減少で、2008年以降の15年間では2008年(20件)に次いで、2番目の低水準だった。また、「新型コロナ」関連倒産は前年同月と同件数の8件で、2カ月連続で10件を下回った。

 産業別では、最多が「サービス業他」の13件(前年同月比45.8%減)で、負債1,000万円未満の倒産の54.1%を占めた。以下、「建設業」4件(同42.8%減)、「農・林・漁・鉱業」「小売業」「情報通信業」が各2件の順。
 原因別では、最多は「販売不振」の17件(同46.8%減)で、ほぼ半減したが全体の7割(構成比70.8%)を占めた。このほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」が3件(前年同月比±0.0%)、「事業上の失敗」「運転資金の欠乏」が各2件だった。
 資本金別は、個人企業他8件(前年同月15件)を含む1,000万円未満が23件(同39.4%減)で、構成比は95.8%になった。
 形態別は、「破産」が23件(前年同月比43.9%減)で全体の95.8%を占め、小・零細企業では業績不振から経営を立て直せず、事業継続を断念しやすい実態を示している。

 コロナ関連の資金繰り支援策で、多くの企業は資金繰りが一時的に緩和し、倒産が抑制された。だが、長引くコロナ禍で業績回復は遅れ、コロナ関連の借入金の返済時期に円安や資源高、ウクライナ情勢などに起因する物価高が重なり、人手不足も顕在化している。
 アフターコロナに向け、借換え保証だけでなく新たな資金供給や事業再生、廃業への支援など、小・零細企業に寄り添った支援が必要な時期を迎えている。

  • ※本調査は、2022年8月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

3カ月連続で前年同月を下回る

 2022年8月の負債1,000万円未満の倒産は24件(前年同月比42.8%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。2022年では7月に並び、1月(20件)に次いで2番目の低水準となった。
 「新型コロナ」関連倒産は前年同月と同件数の8件で、2カ月連続で10件を下回った。構成比は33.3%(前年同月19.0%)で、3社に1社の割合だった。
 負債1,000万円未満の倒産は、資金余力の乏しい小・零細企業が大半で、業績回復が進まずにコロナ借入の返済が本格化する時期を迎えている。このため、今後、息切れ型の倒産が増える可能性が高まっている。

1000万未満

【産業別】農・林・漁・鉱業と情報通信業の2産業が増加

 産業別では、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と情報通信業の2産業が増加した。一方、減少は建設業、製造業、卸売業、小売業、金融・保険業、不動産業、運輸業、サービス業他の8産業。
 最多は、サービス業他の13件(前年同月比45.8%減)で、8月としては2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は54.1%で、前年同月の57.1%から3.0ポイント低下した。
 このほか、小売業2件(前年同月4件)が3年連続、建設業4件(同7件)、卸売業1件(同2件)が2年連続で、それぞれ前年同月を下回った。製造業は15年間で初めて、金融・保険業、不動産業、運輸業は2年ぶりに、それぞれ発生がなかった。
 増加では、農・林・漁・鉱業は2件(同ゼロ)で、8月としては2008年以降の15年間で初めて発生した。情報通信業2件(同1件)は、2年ぶりに前年同月を上回った。
 業種別では、エステティック業、学習塾が各2件。このほか、野菜作農業、花き作農業、土木工事業、大工工事業、塗装工事業、受託開発ソフトウェア業、テレビジョン番組制作業、ペット・ペット用品小売業、無店舗小売業、酒場,ビヤホール、パチンコホール、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業、自動車一般整備業、職業紹介業などが各1件。

1000万未満

【形態別】消滅型の倒産が95.8%

 形態別は、最多が「破産」の23件(前年同月比43.9%減、前年同月41件)で、8月では3年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産の95.8%を占め、前年同月から1.8ポイント低下した。
 このほか、「取引停止処分」が1件(前年同月ゼロ)だった。
 負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業で、業績不振から抜け出せず、先行きの見通しも立たない企業が占めている。こうした経営再建や再構築に投じる資金余力が乏しい企業が、事業継続を断念するケースが多い。

【原因別】販売不振が7割

 原因別では、最多が「販売不振」の17件(前年同月比46.8%減)で、8月では2年ぶりに前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産の7割(構成比70.8%)を占め、前年同月の76.1%から5.3ポイント低下した。「既往のシワ寄せ(赤字累積)」は、2019年以来、3年ぶりに発生がなかった(前年同月2件)。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は17件(前年同月比50.0%減、前年同月34件)で、2年ぶりに前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は70.8%で、前年同月の80.9%より10.1ポイント低下した。
 このほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」が3件、「事業上の失敗」「運転資金の欠乏」が各2件と、それぞれ前年同月と同件数だった。

【資本金別】1千万円未満が9割超

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が23件(前年同月比39.4%減、前年同月38件)で、8月としては3年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は95.8%で、前年同月の90.4%より5.4ポイント上昇した。
 内訳は、「個人企業他」が8件(同46.6%減、同15件)、「1百万円以上5百万円未満」が6件(同57.1%減、同14件)、「1百万円未満」が5件(同28.5%減、同7件)、「5百万円以上1千万円未満」が4件(前年同月2件)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が1件(同4件)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
 「5千万円以上1億円未満」と「1億円以上」は、2008年以降の15年間では発生していない。

© 株式会社東京商工リサーチ