棚田ビューを独り占め。五感が研ぎ澄まされ心を満たす大人のおこもり宿【界 由布院宿泊記】

大分県の由布院温泉は、全国2位の湧出量と源泉数を誇る人気の温泉地。2022年8月3日、星野リゾートが手がける温泉旅館ブランド「界」の20カ所目となる施設「界 由布院」がJR由布院駅からタクシーで約10分の場所にグランドオープンしました。建築家・隈研吾さんが設計とデザインを担当され、その造りや設えにもこだわりが光ります。宿の中心には棚田が広がり、由布院の原風景を五感でフルに感じられる滞在を宿泊ルポでお届けします。

まるで自分のためにあるかのような棚田の風景

界 由布院のコンセプトは「棚田暦(たなだごよみ)で憩う宿」で、棚田を囲むようにテラスや客室、離れのお部屋が配置されています。設計とデザインは建築家・隈研吾さんが担当。宿の中心にある棚田を通じて、由布院の原風景と四季の移ろいが感じられるお宿です。

全45室の中には、棚田に面した「蛍かごの間(棚田離れ)」とくぬぎ林に面した「蛍かごの間(くぬぎ離れ)」の2タイプの離れがあります。離れは客室自体が1つの建物となっているので、よりプライベート感のあるおこもり滞在に最適です。

特に、今回宿泊した棚田離れの客室は、棚田ビューを独り占めできる贅沢な造り。縁側に腰を下ろせば、まるでおばあちゃんの住む田舎に来たような、そして里山にいるかのような錯覚に陥ります。棚田のある風景を楽しみながら、お酒やコーヒーを片手にのんびりとくつろぐことができますよ。

客室に入ると、廊下の床に使われている日田杉と畳の香りに癒されます。大分の竹を使ったというソファも、座り心地がよく素敵な造り。

廊下から棚田を眺められる「ピクチャーウィンドウ」。

竹でできたブラインドも美しい。

ベッドボードにも竹が使われ、まさに竹づくしの客室。ベッド上には蛍かごの照明が。大分県の国東半島(くにさきはんとう)で生産されている、「七島藺(しちとうい)」という素材で作られた照明は、蛍のように柔らかく光ります。日が暮れると、天井などに映る光の動きも情緒があって素敵なんです。

離れの部屋には露天風呂もついていて、湯に浸かりながら棚田のある風景を楽しめます。

到着したらすぐに温泉に浸かって旅の疲れを癒したいですよね。そして夕食の前に1杯飲めたら最高なのに……。そんな人のために、界では「至福の湯上がりビールとご当地おつまみ」のセット(1,200円)が用意されています。筆者はお部屋の縁側でしっぽりと。その名の通り、湯上がりにピッタリな、フルーティーでおいしいビールです。最高!

至福の湯上がりビールとご当地おつまみ

期間:2022年8月3日(水)~10月31日(月)

開催時間:15:00~19:00

対象年齢:大人

含まれる内容:「至福の湯上がりビール」1本/ご当地おつまみ「ジビエソーセージ」

料金:1,200円

各日売り切れ次第終了

このあたりは天気が変わりやすく、カラッと晴れることが少ないのだとか。筆者らが訪れた日も、バケツをひっくり返したような雨が降った時間がありました。雨が棚田の水面に描く円って美しいなぁと、しみじみ眺める時間も贅沢に感じられます。

雨が上がったあと、少し日が暮れた時間に散策しながら眺める風景も趣がありました。

お部屋から縁側に出られる扉には、網戸がついています。網戸から入る風は心地よく、鳥のさえずりや虫の鳴き声もよく聞こえるので、お部屋にいる間は網戸にして過ごしていました。夜にはカエルの合唱が聞こえて賑やかに。

客室のガラスにもカエルがくっついていて、まじまじと観察してしまいました。カエルをこんなにじっくりと見るのは、子どものとき以来です。気がつけばお部屋の中にも親子ガエルがやって来るという体験も! 大きなカエルと子どものように小さなカエルは親子かどうか定かではありませんが、もちろん外に逃がしてあげましたよ。

宿のさまざまな場所から棚田を眺める

界 由布院のエントランスにも、大分で多く生産されている竹材が使われ、農閑期に行われる手仕事「わらない」で作られた藁で作る縄もあしらわれています。

シック且つ落ち着いたトーンでまとめられたフロントとロビー。ガラスの向こう側には、滞在中いつでも飲みもの(コーヒー・紅茶・ハーブティー)や読書が楽しめるトラベルライブラリーがあります。

お土産のほか、界 由布院の客室で使われている食器などが販売されているショップも。

宿の中心に広がる棚田を一望できる「棚田テラス」。眼前に広がる棚田や林、山の風景からは四季の移ろいも感じられます。

山にかかる朝霧を眺められる「朝霧テラス」。こちらでは、朝から界の現代湯治体操も行われ、気持ちのよい1日のスタートがきれますよ。

滞在を快適にしてくれるアメニティやドリンク類

界といえば、アメニティやドリンクが充実しているのも魅力のひとつ。スキンケアは、クレンジング、洗顔ソープ、化粧水、乳液、ボディローション、ハンドソープまでそろっているので、スキンケア品を持参しなくてよいのが本当に助かります。全国にある界それぞれに色が異なるオリジナルの風呂敷には、歯ブラシ、ブラシ、コットン、綿棒、ヘアゴムが入っています。

部屋着は肌触りがよく動きやすい作務衣に、靴下も用意されています。「わらない」で作られた縄のモチーフがついたルームキーも可愛い。

冷蔵庫には無料のウォーターポットとミニバーがあり、お酒と湯治におすすめのドリンクが並んでいます。

ドリップコーヒーや温泉蒸し生姜湯のほかに、香り豊かなごぼう茶も用意されています。

お部屋にある湯呑みやコーヒーカップも素敵なものばかり。

空と由布岳の風景を楽しむ露天風呂

©Hoshino Resorts Inc.

棚田テラスの先にある大浴場は内風呂と露天風呂から成り、全国2位の湧出量と源泉数を誇る由布院温泉を満喫できます。お湯は、柔らかな泉質の弱アルカリ性単純温泉。露天風呂から眺める景色も、棚田をイメージした造りになっていました。天気がよければ由布岳も望めて、開放感もたっぷりです。

脱衣所には客室と同様にスキンケアセット(クレンジング、洗顔ソープ、化粧水、乳液、ボディローション、ハンドソープ)がそろっていて、バスタオルやブラシ、コットン、綿棒、シャワーキャップ、カミソリも用意されているので手ぶらでOK。ドライヤーはダイソンです。

温泉を楽しんだあとは、ドリンクやアイスキャンディがいただける湯上がり処でほっと一息。ここからも棚田のある風景を楽しめますよ。

器にも魅せられる!お腹も心も大満足な食事

夕食【特別会席】

そしていよいよ、お楽しみの夕食です。

先付けで出てきた、かぼすドレッシングでいただく、ヤソゼリ(クレソン)と猪の生ハムが入ったサラダがおいしい!

煮物椀は、甘鯛と海老真薯に、松茸やハナビラタケ、アワビタケが入った贅沢な土瓶蒸し。こちらも大分の名産であるかぼすを絞れば、爽やかな風味がプラスされて最高です。

界の名物「宝楽盛り」のお造りは、フグの薄造りに太刀魚など。太刀魚のお刺身は滅多にお目にかかれないこともあって、すっかりご機嫌です。

続いては揚げ物。湯葉と糸すじ青のりを巻いた車海老東寺揚げと、椎茸とししとうの天ぷら。これが本当においしかった。

特別会席のメインは山の野生味をいただく「山のももんじ鍋」。穴熊や鹿、猪、牛肉の4種類のお肉を、すっぽんの出汁スープにくぐらせていただくしゃぶしゃぶ鍋です。木箱の引き出しを開けるとお肉が登場。しゃぶしゃぶに使われている鍋も素敵です。ジビエをいただく機会はあまりないので、貴重な食体験でした。

姫島ひじきと紫蘇の実の土鍋ごはん。日本一早く獲れるという姫島ひじきは、実は2日間で1年分を獲るというから驚きです。ひじきが最もおいしい時期を狙い、一気に収穫してしまうのだとか。食べきれなかった土鍋ごはんは、折詰にして持たせてくれたのもうれしかったです。

締めの甘味は、やっこめのミルク煮 麦茶のゼリー。ガラスの急須に入った麦茶のゼリーをかけていただくという、ユニークなデザートです。「やっこめ」とは焼き米のことで、香ばしさがこのデザートのいいアクセントになっていました。

最後の甘味までおいしくいただき、大満足の夕食となりました。

朝食

そして朝食は、和食と洋食から選べます。和食は七輪で野菜を焼き、胡麻だれでいただきました。かごの中にセットされた野菜の色鮮やかなこと! 小鹿田焼の器も素敵ですね。

大分の郷土料理「だんご汁」は、優しい味わいにほっこりします。食後には、スタッフに声をかけるとコーヒーもいただけます。

洋食は、和食と同様に野菜とベーコンを七輪で焼きます。5種類の米粉パンはミニサイズで可愛い。いろいろなパンを楽しめるのもうれしいです。和食、洋食ともに、器や盛り付けも美しいので、豊かな気分を味わえました。

※食材などは変更になる場合があります

身体いっぱいに自然を感じて心が満たされる

心地よい風を感じながら、ぼうっと棚田のある風景を眺めて過ごした今回の滞在。移ろいゆく季節や、コロコロ変わる天気と空の表情によっても見える風景は変わり、一つとして同じ景色はありません。風によって木々がそよぐ音、雨の音、鳥のさえずり、虫の鳴き声。それらは五感を刺激し、界 由布院での滞在をより豊かなものにしてくれました。

界 由布院

住所:大分県由布市湯布院町川上398

電話番号:界予約センター0570-073-011(9:30~18:00)

1泊1名 35,000円~(今回宿泊した棚田離れは1泊1名 51,000円~)

公式サイト:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiyufuin/

[Photos by Aya Yamaguchi]

© 株式会社オンエア