「仕方がないけど…」新学期も続く小学校でのコロナ対策

小学校では2学期が始まりました。コロナ禍となって2年半が過ぎる中「手洗い」や「黙食」と、新学期も変わらずコロナ対策が続いているようです。

東京・葛飾区内にある小学校では1日2回、中休みと昼休みに手洗いを促す放送を流しています。この校内放送を聞いた児童たちが向かうのは「手洗い場」で、子どもたちは黙々と手洗いに励みます。また、学校での憩いの時間となるはずの給食では黙って食事を取る、いわゆる「黙食」に努めていました。学校内ではこのような感染対策の習慣がコロナ禍の2年半、ずっと続けられています。6年の担任は「子どもが安全に元気に来て安全に元気に帰ることが大事なので、保護者から預かっている以上、しっかり意識しなくてはいけない」と話します。

この小学校では2021年2月、1つのクラスで感染が広がり、学級閉鎖となりました。さらに、今年の夏休み前となる2022年7月にも感染者が相次ぎ、授業数を減らすなど対応に追われました。新学期が始まった今、学校側は児童たちが学校内で感染がしないようにと、改めて感染対策を徹底しています。教師は「日頃からやっている消毒、手を洗うなど、子どもたちの気が緩みがちなところもあるので『しっかりやろう』と声をかけていくしかできない」と話しています。

一方で、子どもたちからは「新型コロナのことを考えると仕方ないけど みんなの表情が見たいからマスクを外したい」「以前は机をくっつけて給食を食べていたから、前みたいに食べてみたい」など、以前のような学校生活を望む切実な声も聞かれました。

<感染者は減少傾向… 新学期で影響は?>

新学期が始まり、感染状況に影響は出ているのでしょうか。

9月1日に開かれた東京都のモニタリング会議で、専門家からは「新学期を迎え、学校生活において基本的な感染防止対策を取る必要がある」「夏休みが明けて感染拡大が起きないか注視する必要がある」と指摘がありました。そして9月8日の会議では、新規感染者の年代別の割合を見ると、新学期が始まってから5日までのデータでは10代未満の割合が2%ほど上昇していて、専門家からは「子どもの感染者数が増えた時に家庭内で大人に感染し、感染拡大を引き起こすので、引き続き感染対策を徹底するよう」呼びかけられました。ただし、もちろん家庭内では大人から子どもへと感染する例もあるため、大人も気を付けないといけません。

東京都は新学期を迎えるに当たって、学校向けに「感染対策のパンフレット」を用意しています。『登校前に健康観察をして、具合の悪いときは無理に登校しない』『こまめに換気をしましょう』『こまめに手洗いや消毒をしましょう』など、全体的に目新しい対策はなく、各学校の現場での"頑張り”に委ねられているのが現状です。全国的に見てみると、島根県では新学期の開始に合わせて「2週間の部活動の停止要請」が出されるなど、社会全体では制限が緩和される中、学校への制限が強化される場面もみられています。今回、葛飾区の小学校を取材したTOKYO MXの成瀬隆昌記者は、子どもたちが給食の時間、全員が教壇の方を向いて黙って食事をする「黙食」の姿を目の当たりにして"給食は楽しい時間”という自身の思い出とのギャップに胸が詰まる思いだったと話しています。

社会全体の対策の緩和が子どもたちの感染対策の強化につながってしまうのは何としても避けなければなりません。ただひたすら我慢させるだけでなく、どうすれば子どもたちの健全な成長を守れるのか、国や東京都の対応だけでなく、私たち大人がしっかりと考えていかなければならない課題でもあります。

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