60年ぶりに三つどもえの戦いになった波佐見町長選。現職の一瀬政太氏(78)の7選不出馬で、無所属新人の3候補が、窯業や農業を軸とする産業振興や子育て、高齢者支援で論戦を繰り広げている。
新型コロナウイルス第7波の影響で集会を控えていた各陣営だが、告示後は個人演説会を開き、政策や人柄をアピールしている。
最も早く5月に出馬表明した前町議の藤川法男候補は2度目の挑戦。前回、現職に366票差で敗れた。他陣営は「知名度は高い」と警戒するが、藤川氏は「前回と構図は異なる」と意に介さず、街頭や動画配信で公約の浸透を図る。一瀬町政に「私たちが望む姿とは異なる」と手厳しく、「人づくりから始まる町づくり」と刷新を訴える。
前副町長の前川芳徳候補は「ふるさと納税20億円の仕掛け人」などと45年の行政経験と実績を強調。一瀬町政の継続と進化を唱える。出馬表明は7月下旬で「知名度はなく、出遅れている」と前川氏。出馬要請した若手・中堅経営者らが後援会を支える。「ようやく他候補の背中が見えてきた」(陣営幹部)と支持拡大に奔走している。
6月、一瀬氏の不出馬を受け名乗りを上げた前町議の今井泰照候補は5期18年、議員を務め議長もした知名度が武器。町内中学校を統合した波佐見中の1期生で「町内全域に同窓生がいるのが強み」(陣営幹部)。「みんなが主役のまちづくり」をモットーに同窓生らでつくる後援会と駆け回り、声を吸い上げ実現する町政への転換を主張する。
現職の一瀬氏は各陣営の事務所開きに姿を見せず静観。一方、地元選出の中島廣義県議会議長(76)は出席し「当選した候補を全力で支える」との立場。ある政党関係者は「3候補とも知名度や実績から票が取れる人物。接戦になる。票がどう割れるか。終盤の追い込み次第」と予想する。
三つどもえの戦いに20代の男性会社員は「3人とも60代だし、公約の違いもよく分からない」と投票先を決めかねている。町内のユーチューバー「波佐見アゲアゲTV」は、若い世代に参考にしてもらおうと、各候補に“突撃インタビュー”した動画を配信している。
候補者空白地で農業が盛んな南地区や、浮動票の行方が鍵を握りそう。各陣営とも当選確実な票数を3500とみている。投票率は各陣営とも前回の65.25%を上回る70%程度を予想している。
有権者数は1万1925人(男5551、女6374)=5日現在、町選管調べ=。
波佐見町長選 終盤情勢 窯業、子育て支援で論戦
- Published
- 2022/09/09 11:20 (JST)
© 株式会社長崎新聞社