地元凱旋レースは「ふだんどおりに」戦うトヨタ8号車の平川亮。GT500との興味深い比較も

 9月9日(金)、静岡県の富士スピードウェイでいよいよ開幕したWEC世界耐久選手権第5戦『富士6時間レース』。トヨタGAZOO Racingのセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組8号車トヨタGR010ハイブリッドは、フリープラクティス1では1分31秒171でトップタイム。フリープラクティス2でも1分30秒173で2番手につけた。今季からWECに参戦している平川亮が、初の母国でのWECを振り返った。

 スーパーGT GT500クラスの2017年チャンピオンである平川は、2022年からトヨタGAZOO Racing・8号車GR010ハイブリッドのクルーとしてWECに参戦している。第3戦ル・マン24時間では、ハイパーカーでの初挑戦で初優勝。日本人最年少優勝を成し遂げた。

 そんな平川にとって、今回の第5戦富士は母国凱旋レース。もちろん周囲からの期待は高いが、「感触はいつもどおりで、WECのシリーズの一戦としてやっています。もちろん力も入りやすいですし、知っているサーキットなのですが、そこはいつもどおりにやろうというアプローチをしています」とふだんどおりに戦っているという。

 ただ、ふだんのWECと違うのは「コースを良く知っていること」だという。「前日のトラックウォークもそうでしたが、走り方をチームメイトに教えたりしています。フリープラクティス1の後も聞きにこられたりしていました。いつもは逆なんですけどね」とWECの経験が深いブエミ、ハートレーに対し、富士の経験を伝えることもあるのだとか。

コースウォークへと向かうトヨタGAZOO Racingのドライバーら

 そんな地の利があれば、平川の初の予選アタックにも注目したいところだが、こちらは「そこまで僕の経験がなかったので断念しました」と残念ながら見られなさそう。「予選シミュレーションをやったことがないので。ニュータイヤ一発についてはまだ準備をしてなかったですし、チャンピオンシップを考えるとリズムを崩すのは良くないと思います。ル・マンではブレンドンがポールポジションを獲って、そこから良い流れもできましたから」とあくまでふだんどおりの流れを意識しているようだ。

 もちろん9月10日(土)の予選、そして決勝と、ライバルとなりそうなのはアルピーヌ、そして2台のプジョー9X8。8号車トヨタはこの日は気温のせいかややアンダーステアがあったというが、予選までに仕上げていきたいと平川。

「プジョーについてはモンツァから参戦してきて、遅いわけはないし、しっかり走っている。信頼性も端から見ていると、かなり改善しているように感じます。レースに向けて速そうですし、アルピーヌも午後は速かったですからね。明日のフリープラクティス3でしっかり煮詰めていければと思っています」

■GR010よりもGT500の方が速い!?

 ちなみに、この日のフリープラクティス2でのトップタイムは、僚友7号車の1分29秒948だった。今年8月に富士スピードウェイで行われたスーパーGT第4戦でのポールポジションタイムは、WedsSport ADVAN GR Supraの1分26秒178。決勝のファステストラップはKeePer TOM’S GR Supraの1分29秒948と、この日の7号車とまったくの同タイムだった。

 ハイパーカー規定となり、性能調整等も経てWEC最高峰クラスのタイムは2019-20年シーズンの1分24秒台から大きくダウンしているが、どちらも経験している平川に“比較”してもらうと、興味深い回答を得た。

「サーキットはいつも走っていますが、このクルマ(トヨタGR010ハイブリッド)なりの走らせ方があるんです。パワーはあるけれど、コーナリングはGT500とかに比べると遅い。ブレーキを行きすぎてしまうことがあります。いつものリズムでいくとしっちゃかめっちゃかになってしまう。そこはレースに向けて課題です」と平川。

「たぶん、GT500の方が全然速いです。GT500のレースラップくらいではないでしょうか(ちなみにこの質問はタイムを見ずに聞いた)。予選になったらもう少し(GR010ハイブリッドのタイムが)いくとは思いますが、そこはレギュレーションがあることなので、仕方ないですね」

 2車の比較について、平川は「GR010ハイブリッドはストレートが320km/hくらいは出ますが、GT500はダウンフォースもあるし、軽い。それにタイヤが1スティント分少ないですからね。僕たちは2スティントを走り切るタイヤですし」とパワーはGR010ハイブリッドに分がありつつも、開発競争があるタイヤ、ダウンフォースでコーナリングはGT500に分があると見る。

 富士スピードウェイを良く知ることは平川にとって、「気持ちとしては逆にプレッシャーというか。“速く走って当たり前”みたいなところもありますし。なんだか変な雰囲気です(笑)」というから面白い。ただGR010ハイブリッドへの“慣れ”を果たせば、平川にとって真の地の利となるはずだ。

8号車トヨタGR010ハイブリッド WEC第5戦富士

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