コロナ「全数把握」簡略化 長崎県内で開始 現場の業務負担軽減

 新型コロナウイルス感染者の全数把握の簡略化が9日、長崎県で始まった。医療機関が保健所に個人情報などを届ける対象を65歳以上の高齢者ら重症化リスクが高い人に限定し、関係者の負担を減らすのが狙い。現場からは歓迎の声が聞かれ、大きな混乱はなかった。
 西彼長与町のこが内科外科クリニック(古賀崇理事長)はこの数カ月、昼休みを返上して発熱外来に対応してきた。一般診療に影響が出ないよう正午から午後2時半、さらに夕方からも受け付け、予約が50人を超える日もあった。古賀理事長は「届け出の入力だけで3時間かかった日もある。今後は相当、負担が減ると思う」と歓迎した。
 佐世保市新型コロナウイルス感染症特別対策室によると、不要な発生届が届くケースはあったが、大きなトラブルや混乱はなかった。発生届は8割程度減ったという。小田寛司室長は「発生状況や年代などすべてを把握できなくなり、感染症対策を考える上で心配もある」と話した。
 簡略化に合わせて県県央保健所管内では、コロナ疑いがある患者の救急搬送の判断者を保健所側から病院側に変更する。8日夜、対応を協議するオンライン会議で医師からは「搬送を見送る判断は抵抗もあるが、救急や医療を守るためには仕方がない」「解熱鎮痛剤を常備してもらえれば搬送しなくてもいいケースは増える。もっと広報を」などさまざまな意見が出た。
 藤田利枝所長は「新型コロナがインフルエンザと同じ扱いになっていくためには必要な過程だ」と話す。
 全数把握の簡略化は佐賀や宮城など4県が2日から開始。26日からは全国一律で始まる。


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