大雨で泥だらけになった思い出の写真、救います 大雨の福井県南越前町で活動の男性「被災地を元気に」

全国で被災地ボランティアをしている須磨航さん。「丁寧に写真洗浄をしてお返ししたい」と話す=福井県若狭町気山

 福井県南越前町や勝山市を襲った8月上旬の大雨で被害を受けた県民に少しでも元気になってもらおうと、若狭町の社会福祉士、須磨航さん(24)が、泥で汚れた思い出の写真を洗浄する取り組みを始める。学生時代から全国の被災地でボランティア活動に取り組んできた須磨さんは、南越前町でもボランティアセンターのスタッフとして関わっており、被災地に寄り添い続けている。

 須磨さんは北九州市立大学で、地域福祉やNPO論を学んだ。大学1年生だった2017年、熊本地震の被災者の仮設住宅を訪問。お茶会やカラオケ大会などサロン活動をした。初めての被災地訪問だった。

⇒【動画】大雨直後の南越前町の様子

 同年7月には九州北部を豪雨が襲い、直後に福岡県内の被災地に入った。「茶色の世界が広がっていた」。民家の泥出し作業を手伝った。卒業までに90日間にわたり断続的に現地に入り、ボランティアセンターの運営にも携わった。ワークショップができる子どもの遊び場をつくったり、サンタクロースにふんしてプレゼントをしたり…。復旧作業は、時間とともに地域を元気づける活動に変わった。

 19年10月の台風19号では長野県で活動。ボランティアセンターには道路に落ちていた写真や、家の中で見つけた写真などが集まってきた。水や特殊なスポンジで汚れを丁寧に取り、アルコール除菌をして、乾かして持ち主に返した。

 ある高齢女性からは、仏間にあった娘の遺影の洗浄を頼まれた。きれいになった遺影を見て、女性は「ありがとう」と泣きながら、家族に見せて回った。須磨さんは「当たり前の景色がなくなってしまうのが水害。一枚の写真を救うことは、その人の人生にとって大きいことだと思った」と話す。

 大学卒業後は1年間、長野県で地域おこし協力隊として自治体の防災活動をサポートし、昨年実家がある若狭町に戻ってきた。同年12月には全国の仲間たちとNPO法人「災害共生支援機構from」を立ち上げた。

 今年8月に豪雨に襲われた南越前町では、ボランティアセンターのスタッフとして、ボランティアと被災住宅のマッチング、送迎バスの誘導などを担当した。須磨さんは「汚れてしまった写真を持っている住民がきっといると思う。大切な思い出を、できるかぎりきれいにしてお返ししたい」と話している。

 写真洗浄は無料。

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