WEC第5戦富士のLM-GTE Amクラスに挑むふたりの日本人は好走みせるも悔しい予選に

 9月10日、静岡県の富士スピードウェイでWEC世界耐久選手権第5戦『富士6時間耐久レース』の予選が行われたが、LM-GTE Amクラスでアタックを担当したDステーション・レーシングの星野敏、チーム・プロジェクト1の木村武史のふたりの日本人ドライバーは、それぞれが一瞬の出来事により、わずかに悔しさを残す予選となった。

■Dステーション星野敏は予選最上位記録も……まさかの裁定に

 星野敏/藤井誠暢/チャーリー・ファグの3人でフル参戦し、初のWECでの母国レースに挑んでいるDステーション・レーシングは、初日からフィーリングが良く、性能調整からライバル勢にベストタイムでは及んでいないものの、フリープラクティス3までを順調に進め、星野がアタッカーを務める予選に臨んだ。

 アタックでは3周目に1分40秒097を記録し、翌周には1分40秒038、さらに5周目には1分40秒065を記録するも、なかなか1分40秒台を割れない。コースインが早かったこともあり、6周目のアタックが可能になったが、ニュータイヤの良い部分はすでに残っていないかと思われた。しかし無線で藤井から「星野さん、もう1周いきましょう」と指示が飛んだ。

 星野は6周目、セクター1、2ともに自己ベストタイムを記録すると、最後は1分39秒710までタイムを縮め、見事母国レースで暫定4番手につけてみせた。

「午前中はアンダーステアだったのに、急にオーバーステアになってしまって。無線で藤井君が『もう1周!』というので『ダメだよ』と思いながらアタックしましたが、うまくタイムが出ました」と星野。ピットでは母国レースでの今季予選最上位記録に笑顔が生まれた。

 しかし予選後、まさかの裁定が。星野のアタック中に他車のスピンがあったが、このダブルイエロー提示中に減速しなかったとして、記録した全タイムが抹消になってしまった。これでDステーション・レーシングの777号車アストンマーティンは、発表されたグリッド表では最後尾からスタートすることになった。

 とは言え、今季のパターンからすれば、9月11日の決勝では、スタートドライバーの藤井誠暢がすぐに順位を上げてくれるはずだ。そしてこのところ多かったトラブルが出なければ、追い上げも十分に可能だろう。

Dステーション・レーシングのアストンマーティン・バンテージAMR

■さらなる予選上位もあり得た!? 木村武史は100Rでわずかなロス

 一方急遽参戦が決まり、9月9日のフリープラクティス1で初めてポルシェ911 RSRをドライブしたチーム・プロジェクト1の木村は、初日の走行でさまざまなポルシェへの“慣れ”を体験したことから、9月10日のフリープラクティス3では「例の回転数も対応して、一気にタイムも良くなりました」と1分39秒955までタイムを縮め、チームの信頼を得た。

 迎えた予選。コースイン時に一時エンジンが始動しなかったが、無事にコースインすると、5周目に1分39秒853をマーク。ただここではタイヤのグリップがベストではなく、狙うは翌周のアタック。「狙いどおりに“きた”んです」と木村はTGRコーナー、コカ・コーラ・コーナーと抜群のスピードで抜けていく。

 スピードを乗せ、グリーンファイト100Rコーナーも「盤石の自信をもって」入っていき「限界まで突っ込んだ」が、ここでわずかにブレーキを強く踏んでしまい、リヤが出てしまう。これでタイムロスを喫し、1分40秒669とベストを更新できず、1分39秒853がベストに。結果は7番手となった。

 予選後、このタイムロスがなければ上位が狙えただけに、ピットで大いに悔しそうな表情を浮かべ「こんなに悔しい予選はひさびさですよ」と木村は語った。この日からは木村のドライビングコーチでもあるケイ・コッツォリーノが帯同したが、「フリープラクティス3では1分39秒9が出ていたのに、コンマ1秒しか予選でゲインできていないのはおかしいですよね」と厳しい評価だ。木村自身、ふだんから攻め過ぎないドライバーで、スピン等を見ることはほぼないが、「スナップを出したのは今まで記憶にない」というほど。それほどの好感触と、WECという舞台が木村のミスを誘ってしまったのか。

 しかし一日でポルシェに慣れ、他のジェントルマンドライバーを上回るスピードをみせたのはさすが。「今日いくだけいって、いろいろなことが見えたので、明日はけっこう良いかもしれません」と木村は決勝に向け期待を寄せた。

2022 WEC第5戦富士 チームの信頼を得たチーム・プロジェクト1の木村武史
2022 WEC第5戦富士 チーム・プロジェクト1のポルシェを駆る木村武史

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