「旧統一教会との関与ない」って言っていたのに…自民党の国会議員5人、共同通信アンケートへの回答は「虚偽」? 【全議員回答一覧・更新版付き】

 自民党は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と接点がある党所属の国会議員が、379人のうち179人だったとする調査結果を8日に公表した。この結果を見て、旧統一教会と政治の問題を調べてきた共同通信取材班のメンバーは首をひねった。共同通信が7~8月に実施した教団との関わりを尋ねるアンケート結果と「数字のずれ」を感じたためだ。
 そこで、179人のうち、自民党が「一定の接点があった」として氏名を公表した議員121人が、共同通信のアンケートにはどう対応していたのかを調べてみた。すると、アンケートでは「旧統一教会との関与はない」と否定していた議員が(発表当日の9月8日時点で)5人いることが判明した。さらに、アンケートに答えてくれなかった議員は36人もいた。ほかに、アンケートに「分からない」と答えた議員は16人だった。
 もちろん、議員が一報道機関のアンケートに答える義務はない。正直に答える義務もない。ただ、自民党のトップでもある岸田文雄首相はこれまで「政治家の立場から、それぞれ丁寧に説明していくことが大事だ」と繰り返し述べてきた。裏を返せば、これらの議員にとって旧統一教会とは、それほど隠したい、やましい関係だったのかと邪推したくなる。ちなみに、岸田首相自身もアンケートにはいまだに回答していない。(共同通信取材班)

 【全議員の回答、自民党の調査結果は以下のURLから】

 https://digital.kyodonews.jp/static/diet/questionnaire/list0.html

記者団の取材に応じる岸田文雄首相=8日、首相官邸

 

 共同通信のアンケートでは集会の出席や献金、選挙支援などいずれにも「関与がない」と答えながら、党の調査では「関与がある」と認めた5人は次の面々だ。
 若林洋平参院議員(静岡選挙区)、菅家一郎衆院議員(比例東北)、生稲晃子参院議員(東京選挙区)、盛山正仁衆院議員(比例近畿)、青木一彦参院議員(鳥取・島根選挙区)
 5人とも会合であいさつしたことがあるという。盛山氏はアンケートの自由記述欄に「統一教会とおつきあいがなかったので実態がわかりません。案内のパンフレットを見ても統一教会の名前の記載がなく、わかりません」と記していた。
 

 5人とは別に、東国幹衆院議員(北海道6区)は共同通信アンケートに対し、会合に出席したことはないと回答しつつ、自民党の調査には会合に出席してあいさつしていたと反対の回答をしていた。献金や選挙支援などについては「ない」とした5人と違い、「分からない、答えられない」と回答していた。
  また、共同通信アンケートに回答しない一方で、党の調査に対して教団側との接点を認めた議員は36人いた。この中には、7月の参院選で関連団体の支援を受けたとされ、教団側に「賛同会員」と呼ばれていると説明していた井上義行参院議員(比例)も含まれている。
 

 共同通信アンケートは7月下旬から8月上旬に実施し、自民党は8月下旬から9月上旬に調査していて1カ月の差があった。このため、「アンケートの締め切りまでに調べきれなかったが、後で分かった」という可能性も否定できない。ただ一方で、アンケートの期限内に事務所に保管されている記録や推薦状などを確認し、答えてくれた議員も少なくなかった。回答の有無や記載内容の正確性は、問題への向き合い方を如実に映し出している。
 

 自民党の調査に対しては、379人全員が回答し、結果からは教団側が政権与党に対して広範に接触している実態が判明した。もっとも、この調査自体、十分とは言いがたい。
 

 なぜなら、結果はあくまで議員からの自己申告を集約したに過ぎず、第三者による聞き取りやチェックは経ていないからだ。質問には「秘書やスタッフの受け入れ状況」といった踏み込んだ内容はなく、地方議員も対象になっていないため、全容解明とは程遠い。有権者の判断材料にもなるのに、58人の議員名を公表しなかった対応にも疑問が残る。
 

 また、379人には細田博之衆院議長と尾辻秀久参院議長が「党は離脱中」のため、含まれていない。細田氏について言えば、教団の友好団体の集会でのスピーチなど、複数の接点が指摘されている。亡くなった安倍晋三元首相についても気になるところだ。2021年9月、教団の友好団体「天宙平和連合」のイベントでは、ビデオメッセージを寄せていたが、自民党は、死亡を根拠に実態を十分に把握することには限界があるとして調査の対象外とした。
 

 共同通信のアンケートでは、細田氏と尾辻氏を含めた381人のうち95人が回答しなかった。
 党外のアンケートには沈黙し、事実を語らない一方で、党に対しては接点を認める議員からは「丁寧な説明」をしようとする姿勢はうかがえない。岸田首相は結果を受け「国民の信頼回復に向け努力したい」と語ったが、努力する余地は、まだまだ残されている。

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