<秒読み 西九州新幹線開業> 『諫早・大村の存在感』 交流拡大、経済成長に期待

再開発ビルが完成するなど東口の街並みが大きく変わった諫早駅(上)と周辺整備が続く新大村駅(諫早駅は6月、新大村駅は8月に撮影)

 長崎、佐世保に次ぐ「第3極」として位置付けられる県央の諫早、大村両市。合わせた人口は約23万で県内の2割近くを占める。新幹線駅を手に入れる両市は「交通の要衝」としての存在感が高まり、交流人口の拡大や経済成長をけん引する地域として期待される。
 JR諫早駅東口は、商業施設やホテル、マンション(計105戸)などが入る最高16階建て再開発ビル2棟が整備され、以前とは街並みががらりと変わった。JR長崎線と大村線、島原鉄道が乗り入れ、ビルには県営バスターミナルの機能も集約。全ての新幹線が停車する上、長崎市までの所要時間は約9分に。市は「交通の結節点の強みが増す。開業で露出が増えるのを好機に利便性をアピールしていく」と意気込む。
 これを見据えた動きか、市内ではここ数年、駅周辺を中心にマンション建設が相次ぐ。昨年度は2005年の市町合併以降、初めて転入者が転出者を上回る「社会増」に転じた。
 一方の大村市。今は市民が大村駅からJRで博多に向かう場合、諫早駅か早岐駅(佐世保市)で特急に乗り換えなければならない。新幹線が開業すれば、博多まで今より50分程度短い最速1時間11分で行けるようになり、通勤・通学圏の拡大が見込まれる。
 50年余り人口増が続く同市は「25年に10万人」を見据え、県外からの定住を促している。新幹線が停車する新大村駅東側では、商業施設やマンション2棟(計174戸)などによる再開発を計画。駅周辺に限らず住宅需要は高く、市北部でも宅地開発が進む。
 両市とも新幹線駅をめぐる明るい材料は多いが、課題も残る。諫早駅は東口前の二つの跡地活用策が決まっていない。旧バスターミナルを所有する県交通局は本年度中に一般競争入札で売却する方針。7年前に閉店した大型スーパー西友諫早店跡は、青空駐車場のまま。今後について所有者側は「未定」とする。
 新大村駅前の再開発完了は早くて2年半後。新たな街の姿が徐々に見えてくるとはいえ、乗降客の目には長期間、更地や工事風景が広がる。「何もない」との印象を持たれないように官民の取り組みが急務だ。
 一方、企業誘致に弾みがつくと期待する声もある。ながさき地域政策研究所の菊森淳文理事長は、15年の北陸新幹線(長野-金沢)開業後、金沢市の工業団地分譲率が大幅に上がった例などを挙げ、「移動時間の短縮効果は大きい」と分析。もともと諫早、大村両市は空港と高速道路インターチェンジの近さを強みに工業団地を広げてきた。そこに新幹線駅が加われば「企業や支社支店の誘致が進み、安定的な人口流入が見込める」とみる。


© 株式会社長崎新聞社