日銀と外国人観光客が円安の風向きを変える? 警戒すべき日米の政治面でのリスクも

2022年度の上期が終了しようとしています。今年は世界的なインフレ・金融政策の転換など相場に関するニュースが豊富であり、前年までの右肩上がりの相場とは一風変わり、下落基調ながら上下に大きく振れる展開となっています。

直近でも経済指標で大きく相場が動きました。9月13日(火)に発表された8月分の米国消費者物価指数(CPI)が予想に反して高止まり傾向であったことを嫌気し、NYダウは今年最大となる1,273ドル安で反応しました。為替相場も大きく変動し、発表直前まで142円台で推移していたドル/円相場は、一時144円台後半まで上昇しました。

このようにマクロ環境の変化への注目度が高まっていますが、下期はどうなるのでしょうか。今回は国内の動きを中心に、注目の話題について触れていこうと思います。


金融政策は緩和を維持も、為替相場には警戒感が強まる

冒頭で触れたように、各国の金融政策の変化が株式市場にも大きな影響を与えています。とりわけ米国の金融政策の影響力は大きく、9月13日(火)の株の値動きも、インフレの長期化により9月のFOMCにおいて1.0%の利上げの可能性が浮上したことによる暴落でした。急速な金融引き締め方向の政策に対し、市場が敏感に反応しているのです。

一方で日本の金融政策に目を向けると、日銀のスタンスは金融緩和から変更の兆しはありません。これに関しては、米国や欧州の株式市場が利上げに際して逆風を受けている一方で日本株の相対的な強さの源泉になっていると言えます。

そのような中、関心が向いているのは為替市場です。米国の利上げが開始された3月以降から急速にドル高・円安が進行し、年初から30%を超える円安となっています。一般的には日本の株式市場において円安はポジティブに捉えられることが多いです。しかし、インフレの観点からすると輸入物価の上昇による国内のインフレ圧力になるとも考えられ、急速な円安は専門家の間でも賛否が分かれています。

急激な為替相場の変動に伴い、9月14日(水)には、為替介入への準備ともとれる、日銀による「レートチェック」が実施されたとの報道がありました。「レートチェック」の報道後に短期的に円高で反応をしたものの、日米の金利差が拡大傾向にある事実は変わらないため、基本線としては今後も円安への警戒感は続くとみてよいでしょう。金融緩和的な政策を取りながらも、行き過ぎた円安は抑制する必要があるという状況となり、日銀は難しいかじ取りを強いられていると言えます。

金融緩和・円安は株にとって基本的にはポジティブ要因でありますが、他国との政策の違いに目を向けると解釈は異なってきます。下期に向けては、日銀の動きを踏まえて、警戒感を強めて相場と向き合うことも必要でしょう。

訪日消費が相場の風向きも変えるか

金融政策の面では不安定さが見受けられますが、経済対策ではポジティブな要因もあります。入国制限の緩和により、新型コロナ流行前の柱の一つであった、インバウンドの回復が期待されるためです。

具体的には、これまで1日あたり2万人を上限とされていた入国制限を撤廃するという議論が出ています。このニュースが出た9月12日(火)には、関連株が市場でもポジティブな反応を示し、百貨店・ドラッグストア・化粧品関連銘柄を中心に物色される展開となりました。

24年ぶりの円安水準という外国人にとってのメリット、並びに大半の外国人にとって約2年ぶりの訪日となるため、外国人の消費も秋以降期待できるのではないでしょうか。今後は直近で物色対象となったインバウンド消費関連の銘柄には期待感が高まります。特に百貨店銘柄は業績好調により、この相場環境が悪い中でも三越伊勢丹ホールディングス(3099)・J.フロント リテイリング(3086)など、関連銘柄が軒並み9月に年初来高値を更新しており、今後も注目されることが予想されます。

また約2年間、外国人の需要が消失したことによる円安圧力もありましたが、この方針転換により訪日客が復活することで、先に触れた過度な円安進行にも一定の歯止めの効果が期待されます。

年後半にかけて政治面でのリスクに警戒か

最後に政治面のリスクについて、日本・米国それぞれについて見ていきます。

日本では、国政選挙も消化し、今後大きな政治イベントは控えていませんが、内閣支持率が低下していることが一つ不安要素としては存在します。NHKの世論調査によれば、最新の9月の調査において、「支持する」と「支持しない」が共に40%となり、岸田内閣が発足以来、最低の支持率となっています。菅前首相が内閣支持率の低迷の後に退陣し、その後期待感から相場が急反発したのは記憶に新しいですが、内閣が安定しているかどうかは市場にも少なからず影響を及ぼします。

現在の支持率低下の要因である、統一教会の話題や安倍前首相の国葬実施以外にも、国内のインフレ進行による国民の生活不安など、国民から反発が発生する要因も潜んでいます。今後も内閣支持率のトレンドには注意が必要でしょう。

また米国では11月8日(金)に中間選挙を控えています。中間選挙は、下院の全435議席、上院は3分の1の34議席が改選し、中間選挙の投開票日には36州で州知事選も行われる、非常に重要な政治イベントです。選挙の争点には米国民を苦しませているインフレも焦点の一つとなっており、インフレ動向は一段と高い注目を集めていくかもしれません。

また中間選挙の前週には11月のFOMCが控えています。FOMCまでにどのような経済指標が出てくるか、並びにそこでどれくらいの利上げが実施されるかは選挙結果へ影響を与えていくと考えられるでしょう。タイミング的に11月が大きな相場の山場になるということは、投資戦略を立てていく上で念頭に置いておくと良いのではないでしょうか。

足元ではさまざまなニュースに相場が翻弄される展開となっています。年後半にかけては意識的に政治関連のニュースに目を向けてみてはいかがでしょうか。

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