驚異の追い上げをみせたカルソニック、悔しさ残るZENTとSTANLEY。明暗別れたBS勢のウエット戦略【第6戦GT500決勝】

 天候に翻弄される決勝レースとなった2022 スーパーGT第6戦『SUGO GT300km RACE』。特にウエットコンディションでは劣勢になった感のあったブリヂストンタイヤ勢だが、そのなかでもランキングトップで今大会に臨んだカルソニック IMPUL Zは、14番手スタートから5位入賞を飾り、今回も驚異的な追い上げをみせた。

 第1スティントはベルトラン・バケットが務めたが、今回は89kgのサクセスウエイトで燃料リストリクター制限も一番厳しいステージ3ということで、スタート直後はかなり劣勢だったという。

「ドライコンディションでは燃料リストリクターの制限が苦しくて、直線で簡単に抜かれてしまって、ポジションを落としてしまった」とバケット。スタート直後はひとつポジションを上げたが、直後に導入されたセーフティカー解除されてからは、立つ続けにポジションを落とし、5周目には最後尾となった。

 その後、雨が降り始めたのを見て、12号車は16周目にウエットタイヤに交換するが、雨が降り続いていくことを見越したタイヤ選択が裏目に出てしまった。

「雨が降り始めて、ウエットタイヤに交換したけど、そこで選んだ種類のものがコンディションに合っていなかった。(最初に雨が降り始めた時に)そこから雨が強くなるのか、止んでいく方向なのか分からなかったけど、僕たちは雨がもっと強くなると考えてタイヤ選択をしたけど、実際には雨が止んで、路面が乾いていって、(タイヤが)合わなくなってしまった。それでもう一度ピットに入って別の種類のウエットタイヤを装着して挽回した」

 そう語るバケットは、27周目に急きょ別のウエットタイヤに交換した。この時点で、ドライバー交代ができる周回に入っていなかったため、バケットが乗り込んだままでピットアウト。そこからはライバルを圧倒するペースを披露し、レース中盤にはミシュランタイヤを履くCRAFTSPORTS MOTUL ZやMOTUL AUTECH Zよりも、ラップあたり2秒早いペースで周回。ポジションも6番手まで上げて、49周目に再度ピットインした。

 ちょうど雨も止んで路面が乾き始めていたタイミングということで、平峰一貴に交代するとともに、スリックタイヤに交換して、さらなる追い上げを披露。最終的に5位でチェッカーを受けた。

「2セット目のウエットタイヤはすごく良くて、6番手までポジションを上げることができた。最終スティントでは(平峰)一貴が素晴らしい走りをしてくれて、39号車を抜いてゴールしてくれた。14番手スタートから5位でフィニッシュできたので、すごく良いレースになった」

「もともと僕のスティントはロング気味に行く予定だったけど、チームがうまく判断してくれたし、最後スリックタイヤに戻すタイミングもうまくいった。戦略面でもうまくいった1日だ」

 今回は重いサクセスウェイトで苦戦は避けられないと思われていた12号車。ランキング首位の座は3号車に奪われたが、3.5ポイント差の2番手につけており、チャンピオンの可能性を大きく残している。

「タイヤがブリヂストンとミシュランで異なるけど、同じ新型Z同士でチャンピオンシップを競り合っているのは、面白いね!」と笑みを見せるバケットだが、逆転されたことには悔しさを感じている様子。終盤戦での再逆転を誓っていた。

「もちろんランキングをリードしていることに越したことはない。(ランキングで)3号車に追い抜かれてしまったけど、今日の雨ではミシュランの方が強かったけど、残り2戦、一生懸命プッシュして、ベストを尽くしたい。そしてポイントリーダーの座を取り戻して、チャンピオンシップを制したい。そのためにも、残る2戦は良いポジションでゴールしないといけない」

2022スーパーGT第6戦SUGO カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)

■「悔しさはあるが、ノーミスのレースができた」石浦宏明

 今回、ブリヂストンタイヤ勢の中では最上位となったZENT CERUMO GR Supra。レース序盤はトップを快走していたが、雨が降り出して以降もペースは決して悪くはなかったが、ミシュランタイヤ勢の追い上げもあり、最終的に4位と表彰台に一歩届かない結果となった。

 ここ数戦は不本意なレースばかりが続いていた38号車。前日の予選後も石浦宏明は「目標は完走すること」と語っており、その目標は見事達成されたのだが、レース後は「非常に悔しいです。戦える速さがあったのに、天候も含めて、それをうまく活かせない状況になってしまいました。それが悔しいです」と笑顔はなかった。

 それでも、トラブルが続いていた“負のスパイラル”から抜け出して、入賞という結果を残せたことに関しては、少なからず前向きに捉えていた。

「自分たちからすると、ノーミスでレースをするというのは、今シーズンの中では大事なこと。多分、どこかでチームのひとりひとりがプレッシャーというか、追い込まれた状況にあったと思います」

「完走できていなかったことが、重荷になっていたと思うので、今日は自分も絶対にミスをせずになんとか完走して、次に繋がるようにと思って走っていました。そういう意味では予選からクルマのパフォーマンスはあったし、決勝でも、それぞれのコンディションで速さを見せられていたと思います」

「クルマに速さがあるということは次のレースも前向きに考えられます。そこは8月の富士以降で速さを感じているので、次のレースも勝負していきたいです」

 また、立川祐路が担当した前半スティントと、石浦の後半スティントで装着したウエットタイヤは同じ種類だったとのこと。レース終盤にスリックタイヤに履き替えるタイミングも含め、最善は尽くせたという。

「使ったウエットタイヤの種類は一緒でした。立川さんはドライ路面を走っていたので、(タイヤが)傷んだ状態でした。そこでまた雨が降ってきたので新品のウエットタイヤを使っても痛まないのではないかということで、それで行きました。(雨が)降ってからはすごい調子が良かったです」

「最後スリックに替えるタイミングも、あれで良かったのかなと思います。単独で走っていれば、もう2~3周早くても良かったのですけど、GT300がいるとラインを外して抜かなければいけない時もあるので、そこはリスクを考えていきました。そういう部分も含めて、最善は尽くせたのかなと思います」

 とはいえ、今回はウエットコンディションにおけるミシュランタイヤのパフォーマンスが上回っていたのは確か。「(ミシュランのウエットは)テストの時も1周~2秒くらい速かったので、雨が降ったら多分こうなるだろうなというのは分かっていました」と石浦も、この展開はある程度想定はしていたようだが、改善策は探っていきたいと語った。

「そこは課題なので、みんなで取り組まないといけないです。雨が降っていても、これだけの台数が走っていると、最終コーナーとかは、すぐドライ路面になっています。そういう状況下で走ってもタイヤが元気でいるメーカーがいるので、そういうところは何とかしなければいけないなと思っています」

2022スーパーGT第6戦SUGO ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明)

■「ドライのペースは良かったのに……」STANLEY NSX-GT 牧野任祐

 3番グリッドからスタートしたSTANLEY NSX-GTは牧野任祐が前半スティントを担当。1周目にポジションをひとつ上げると、序盤は力強い走りでトップの38号車を追いかけた。

「ドライのペースは良くて、スタートで順位を上げられました。そこから立川選手(38号車)についていきました。ちょっとGT300の集団に引っかかるタイミングで引き離されてしまいましたけど、ペース的には全然良さそうでした。ピックアップもなかったので、これはいけるかなと思っていたのですが……」と、序盤を振り返る牧野。

 雨が降り始めたことで、15周目にウエットタイヤに交換したのだが、ここからペースが落ちてしまい、みるみるうちに順位を落としていった。

「選んだタイヤが、多分うまくマッチしていなかったのかなと思います。(路面状況が)ダンプっぽい感じだったので一番硬いやつを選ぶのが当然かなという感じでいったら、最初にポンっと良いタイムが出ましたその後も特に攻めている感じではなかったんですけど、フロントがボロボロになってしまって、最終コーナーもはみ出しそうになりながら走っていました。どうすることもできなかったです」

 29周目に2回目のピットストップを行い、山本尚貴に交代。ここでウエットタイヤの種類も変えたことで、ペースを取り戻すことはできたが、上位とは大きな差ができてしまい、最後は8位でフィニッシュとなった。

 今回も大量得点を目指していた100号車だが、今回もそれが叶わない結果となってしまった。牧野も「いずれにせよ、ブリヂストンを履くNSXの3台とも沈んでしまいました。ドライではすごく調子が良かったのですけど。ちょっとウエットでは厳しかったですね」と振り返り、NSX勢としては新たな課題が浮き彫りになったようだ。

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