日経平均のルールを変えた任天堂、「スプラトゥーン3」は株価にどう影響したか?

2022年9月12日週は、米国CPIが予想以上に強かった事や、週末には米国大手物流会社フェデックスが、国内外で貨物需要が減少しているため予測が立てられないとして、業績見通しを撤回した事が嫌気され、ニューヨークダウは2ヵ月ぶりの安値となりました。

そうした中で、明るいニュースとして、9月9日(金)に発売したNintendo Switch向けソフト「スプラトゥーン3」の国内販売本数が11日(日)までの3日間で345万本となり、自社のゲーム機向けソフトとして、発売3日間の販売本数では歴代最多になったとの報道がありました。これまでは2020年発売の「あつまれ どうぶつの森」(あつ森)の268万本が最多でしたが、この本数を大きく更新しました。


発売3日間の販売本数が任天堂歴代最多のインパクト

スプラトゥーンは通信対戦型のシューティングゲームです。様々な武器を使ってフィールド上でインクを塗り合い、色を塗った面積で勝敗を競います。初代ソフトは2015年5月に「Wii U」向けソフトとして発売され、2017年7月にNintendo Switch向けに発売された「スプラトゥーン2」は3月末までに世界で1,330万本を販売しています。

このニュースで注目を集めた任天堂ですが、9月9日(金)の終値で58,280円だった株価は、 9月16日(金)の終値で6,1090円と2,810円上昇しました。任天堂は、来月10月1日(土)には株式分割が行われ、現在の株式を10分割します。先述したように任天堂の株価は9月16日(金)の終値で6,1090円ですので1単元で購入するのであれば約610万円以上の資金が必要です。ですが、来月からは約61万円で株式を購入できるので、個人投資家の方が参加しやすい株価になります。

ただし、株式分割によって企業価値は変わりません。

任天堂は2016年7月、スマホ向け位置情報ゲーム「ポケモン GO」を世界各国で配信し、社会現象となるほど話題を集めました。その好調ぶりから株価は堅調に推移し、同社の株価は7月7日(木)からの6営業日で86%の大幅高となりました。7月15日(金)には売買代金が4,760億円に上り、東証1部でトップ、市場全体の売買高の15%を占めるという前代未聞の大商いとなりました。

日経平均のルールを変えた任天堂

少し余談になりますが、私は長い期間、証券ディーラーとして国内株式相場を生業としてきました。任天堂は古くはカードゲーム(花札やカルタ、百人一首)の会社でしたので、ディーラー仲間は親しみを込めて任天堂を「トランプ」と呼んでいました。

一方で同社の取り組みは1970年代後半に家庭用テレビゲーム機を他社に先駆けて発売したり、1980年に一大ブームとなった時計と小型の液晶ゲーム機が1つになった(当時は1つの物が2役こなせるのは画期的でした)「ゲーム&ウォッチ」を発売、1985年にはファミコンソフトのマリオブラザーズの大ヒットがあります。時代を象徴する製品を手掛け、着実に成長を遂げたのは周知のとおりです。

世界的に蔓延した新型コロナウィルスですが、これまでゲームに無縁だった人たちが、このことをきっかけにゲームユーザーへと導かれたかもしれません。1回目の緊急事態宣言は2020年4月でしたが、この時期から株価は大きく上昇しました。

長年、同社株は大証銘柄(大阪取引所)の代表格であった為、日経平均株価(東京証券取引所プライム市場上場銘柄から選定した225銘柄で構成される平均株価)に採用されていませんでした。2013年に東証と大証が統合した事をきっかけに東証(東京証券取引所)へと一本化された事などを受け、昨年、同社は日経平均株価の採用銘柄となりました。

ただし、それまでの計算方法を用いると日経平均株価の構成比率が高まる事から、日経新聞社は換算係数での算出に変更し、これまで採用が難しいと思われた、値段の高い企業が日経平均株価に採用される仕組みへと変更しています。

日経平均株価の採用ルールを変えたのも同社とも言えそうです。


今回は、任天堂の企業としての歴史を振り返ってみました。投資助言や銘柄推奨ではないことをご理解ください。

日本のゲーム産業は世界からも評価が高いとされています。日本経済の起爆剤となり、日本経済が発展する事を願いたいです。

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