またも園児置き去り死 安易な民営化・民間委託が幼い命を奪う

9月6日、静岡県牧之原市の認定子ども園「川崎幼稚園」の理事長は運転していた通園バスに3歳女児を置き去りにし、熱中症で死なせた。きつい言葉で言えば、ずさん極まりない乗下車確認・出欠確認で理事長、同乗職員、担任が園児を殺したのだ。(フリーライター 山本健治)

園児を置き去り死させた事件は昨年7月29日にも起きている。

福岡県中間市の双葉保育園で園長が運転した通園バスに5歳男児を8時間も置き去りにして死なせた。日頃、閉じ込めるような虐待保育をしていたので、保護者たちからは意図的に閉じ込め、死なせたのではないかとの追及もあった。園長と同乗保育士は業務上過失致死罪に問われ、9月26日から裁判が始まる。問題と責任が明らかになるだろう。

この時、厚労省は二度と同様の事故を起こさせないため全国の保育所・幼稚園・認定こども園などに通知を出したが守られず、1年も経たずに同様事件が起きたのだ。理事長と副園長が謝罪会見で、女児の名前も間違え、ヘラヘラ笑いながら答えていたことに対しては誰もが怒った。この事件について永岡佳子文科相は、なぜ通知が守られなかったのかと怒っていたが、通知を出すだけで検証せず、出すだけで終わりの行政が事件を連続させている反省と自覚がないことにもみんなは怒っているのだ。

山本健治。愛称は「ヤマケン」。高槻市議、大阪府議を務め、フリーライター、評論家。ワイドショー番組のコメンテーターとして活躍。その辛口なコメントは「ヤマケン節」と呼ばれた

来年4月、こども家庭庁が発足する。小倉將信特命大臣が首相の指示だと言って、通園バスの車内確認をしなければブザーが鳴る装置を見学し、設置の義務づけなどを考えたいと言っていたが、いい加減な園や運転手はこういう装置の元スイッチを切ってしまうのだ。そんな装置に頼るのではなく、園関係者に改めて子どもたちの成長、安全第一にもとづく保育を行うよう教育し直すことだ。

そもそもこんないい加減な保育園や幼稚園が増えたのは、中曽根首相の国鉄分割民営化から始まり、小泉首相・竹中平蔵経済相コンビのもとで加速し、2005年に郵政が民営化され、民営化・民間委託は「善」という世論をつくりあげ、財政危機が進行する中で、本来民営化してはならない教育・研究・健康・福祉・文化にまで市場原理を持ち込み、それを安倍元首相が「骨太方針」で継承し、保育所・幼稚園の民営化・民間委託を推進した結果、公立幼稚園・保育所は一気に統合・廃止が進み、待機児童ゼロを掛け声に何でもいいから保育所を増やせということで、ずさんな保育所、認定こども園(保育所幼稚園連携施設)が増え、事件事故も増えたのだ。

2000年、全国に保育所は約2万2000あり、公立は約1万3000、民間は約9500だったが、いま公立は6800まで減り、民間は1万6000を超えている。必ずしも公立がいいとは言わないが、金儲け第一の連中がやる保育所、認定子ども園、幼稚園では必ず事故が起きる。私は1970年代半ば、高槻でみんなで民間保育所をつくり、30年間法人理事を務めていたから、他の人より実情を知っている。

通園バスの中で園児が置き去り死させれた=ANNニュースより

大阪でも維新が民営化・民間委託を推進しているが、今回の緊急点検で置き去りにしたり、ずさんな出欠確認をしていたり、虐待と言っていい保育をしている事例はいくつも明らかになっている。安易な民営化・民間委託で、子どもは殺されるのだ。

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