【F1現地情報:イタリア編】食事のために早めの移動、シチリア料理レストランを新発見。色にもこだわりの見えるイタ飯

 オランダからイタリアへの移動は月曜日。2週連続開催の場合、通常、移動日は火曜日にしているが、一食でも多くイタ飯を食べたいので、イタリアGPへの移動はいつもレース翌日にしている。ということで、今回は本場のイタ飯を紹介していこう!!

 もう20年以上、イタリアへ行っているので、行きつけのお店が何軒かあるのだが、今年新しい店を発見した。モンツァの隣町にあるリッゾォーネに、最近できたばかりのオステリア「MOLO 14」。オステリアとは、簡単な食事を提供する庶民的なお店で、日本風にいえば居酒屋のような存在。イタリアの食事処には、このほかにもリストランテ、トラットリア、タベルナがあるが、リストランテがドレスコードがあってコース料理が中心のお店で、トラットリアが大衆向けのレストランで、オステリアはその次にランクするお店で、店内もワイワイしていて、日本人にとっては気軽に入りやすい。MOLOとは、埠頭のこと。このお店はシチリア料理を提供するシーフードが中心のオステリアだった。

 イタリア料理は、大きくアンティパスト(前菜)、プリモ・ピアット(第一のお皿)、セコンド・ピアット(第二のお皿)、ドルチェ(デザート)の4つに分かれている。MOLO 14はオステリアなので、いきなりプリモ・ピアットやセコンド・ピアットを頼んでもいいのでだが、初めてのお店なので、まずはアンティパストを頼んで、様子を見ることに。アンティバストは全部で8種類。メニューの最初に「アンティバスト・MOLO 14」というのがあったので、それを頼むことに。お店の名前が入っているだけあって、シーフードを中心の前菜。日本人なら、これだけでも主催になりそうなボリューム。

 続いて、プリモ・ピアットを注文。プリモ・ピアットはパスタが中心で、MOLO 14がシーフードが中心のオステリアとくれば、スコーリオを頼まない手はない。スコーリオとは、正確にはallo Scoglio(allo Scoglio)のことで、直訳すれば、「磯の」とか「岩礁風の」という意味だ。シーフードのパスタにはほかにもペスカトーレ(漁師風の)やフルッティ ディ マーレ(海の幸)があるが、これらがムール貝やアサリ、イカ、タコのシーフードに殻を剥いたエビが中心なのに対して、スコーリオは有頭エビがいくつも入っていて、見るからに豪華だ。

 イタリア料理でドルチェ(dolce)はデザートを指す言葉だが、本来の意味は「甘美な」「優しい」「柔らかい」で、日常生活にも使用されている単語だ。映像の魔術師と称されたフェデリコ・フェリーニ監督の映画「甘い生活」も本題は「La dolce vita」とドルチェという単語が使用されている。という前置きはこれぐらいにして、シチリア地方のドルチェをいただくことに。お店のおすすめはシチリアでは知らない人はいないと言われるほど有名なカンノーロ・シチリアーノ。それもそのはず、このデザートは映画「ゴッドファーザー」シリーズにも度々登場するお菓子。カンノーロ(cannolo)とは葦(あし=サトウキビの茎)のことで、外側のペストリー生地を筒状にする際にサトウキビが用いられていたことに由来しているが、現在では衛生上の都合で、金属製の筒が用いられる。筒状のペストリーの中に入っているのは、リコッタチーズで、本場イタリアのリコッタチーズは、牛ではなく、羊のリコッタチーズ。ミルクのコクが半端ない。マリトッツォの次のトレンドスイーツとして注目したい。

 イタリアの国民食とも言えるピザの中で、王道といえばトマトとモッツァレラ・チーズのシンプルなマルゲリータだ。これをマルゲリータと呼ぶのは、1800年代にナポリを訪れたイタリア王ウンベルトⅠ世がこのピザを気に入り、王妃だったマルゲリータ妃の名前をつけたらしいのだが、このピザは正確にはトマトとモッツァレラだけではない。バジルが入っていることが重要な要素となる。それはウンベルトⅠ世がこのピザを愛した最大の理由が味だけでなく、イタリア国旗の3色を再現したトリコロールカラーのピザとなっていたことだったからだ。したがって、イタリアの国旗をイメージさせる赤(トマトソース)・白(モッツァレラ)はもちろんのことだが、緑(バジル)が入ってはじめてトリコロールカラーとなり、マルゲリータになる。

 イタリア料理には、このトリコロールカラーが意外と多く、例えば、アンティパストの定番とも言えるトマトとモッツァレラとバジルを組み合わせたカプレーゼも、考えてみれば、トリコロールカラーなのである。

 このトリュフとハムのピザも、トマトソースがない代わりにハムを赤のアクセントにしてトリコロールカラーを創出している。

 イタリア人が色にこだわっているのは、フェラーリがホームグランプリとなるこのイタリアGPで、マシンやレーシングスーツにイエローを取り入れたスペシャルカラーリングにしたことでもわかる。フェラーリと言えば真紅だが、これはフェラーリの色ではなく、レースが始まった20世紀初頭に義務付けられていたナショナルカラー。フェラーリのコーポレートカラーは、フェラーリの本拠地があるマラネロがエミリア・ロマーニャ州モデナ県の県章に使用されている黄色なのだ。

 今年のイタリアGPは舞台であるモンツァ・サーキットの創設100周年だった。それを記念するポスターもよく見ると、トリコロールカラーが。

 イタリアGPの決勝レースのスタート前のセレモニーでは、イタリア空軍の曲芸飛行隊フレッチェ・トリコローリがトリコロールカラーのスモークでホームストレート上空を彩っていた。ちなみにイタリアのトリコロールはフランスの三色旗を起源とし、18世紀末にイタリアに遠征したナポレオンが当時、小国同士で分立していた国を統一して、その統一旗として使用したのが始まりで、緑は国土と自由、白は雪と平等、赤は情熱と博愛を表す。

 フレッチェ・トリコローリのスモークが上空を彩っていたその下では、カラフルなF1マシンが一部、鮮やかな色をあえて消していた。イタリアGP前日の9月8日に、イギリスのエリザベス女王が96歳で永眠したからだ。

「Her Majesty Queen Elizabeth II」とは「エリザベス2世女王陛下」という意味。

「E II R」も、エリザベス2世のことを指す。この“R”はラテン語で“女王” (regina=リジャイナ)を意味するもので、男性の国王であれば、“R”はrex(レックス)の略を使用するため、チャールズ皇太子が国王になれば、Charles Rとなる。

 イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王。「イギリスの母」として愛されたエリザベス女王の訃報を、世界中が悲しみ、そして追悼していた。

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