戦国武将・真柄十郎左衛門の大太刀をたたら製鉄で再現 越前打刃物の発展へ5年がかりの挑戦

卸金の技法で鉄の炭素量を調節する作業をするメンバー

 古来の製鉄法で鋼を手作りし、福井県越前市ゆかりの戦国武将・真柄十郎左衛門の大太刀を再現するプロジェクトを進めている越前打刃物職人らの有志グループが、ふるさと納税の対象となるクラウドファンディング(CF)により資金を募っている。包丁や鎌など暮らしに根付いた製品である「産業的工芸」ではなく、古くからの製法を使った「美術的工芸」を作り出すことで産地の発展を目指している。

 募っているのは越前たたら研究会「鍛人(かぬち)」。2020年3月に発足した。大太刀再現は、日本古来の鋼を製造する技術を持つことで、産地のブランド力の向上を目指している。22年を初年度とし5年がかりで再現する計画。

 たたら製鉄は、砂鉄を木炭とともに炉で熱して還元し、鋼の元になる鉄類の塊を取り出す日本古来の技術。古来、北陸など北日本で作られた地金は特に「北國物(きたぐにもの)」と呼ばれ、黒みを帯びて粘り強いという。

 この鋼を目指し20年から試作を繰り返している。全て福井県内産にこだわり、原料の砂鉄は坂井市三国町の浜辺で採取している。たたら製鉄を経てできた鉄類は、さらに卸金(おろしがね)という技法で炭素量を調整する。

 大太刀再現の一方、子どもたちが体験できる鉄作りの方法の開発など、PR活動にも力を入れている。

 資金募集の目標額は100万円。締め切りは10月29日で、寄付はCFサイト「レディーフォー」から。福井県へのふるさと納税として扱われ、寄付金のうち2千円を超える部分は住民税のおおむね2割を上限に、所得税と合わせて全額が原則、控除・還付される。5千円から5段階あり、20万円と25万円には卸金の技法で精製した現代和鋼で打った刃物を贈る。

 同研究会の弥氏良寛さん(39)は「機械では再現できない、職人ならではの本物の鉄の技を身に付けることで付加価値をつけたい」と協力を呼び掛けている。

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