<金口木舌>誰一人取り残さない車内

 ワシントン特派員をしていたころ、現地の公立小学校に通っていた娘が一度、スクールバスから降りてこなかった。運転手が異変に気づき、車内を点検。熟睡していた娘を起こし、連れてきてくれた

▼放置されていたらと想像するとぞっとする。バスは小中校生を送り届ける分刻みの運行日程だったが、子どもの安全が第一だという原則が徹底されていた

▼静岡県の認定こども園で女児(3)が通園バスに置き去りにされ死亡した。政府は通園バスを所有する幼稚園などへ一斉点検の方針を示していたが、糸満市の市営バスでも児童が取り残される事件が起きた

▼日本自動車連盟によると、炎天下の車内はエンジン停止後わずか30分で約45度まで上昇し、命の危険が生じる。昨年8月1~31日の間、鍵の閉じ込みで出動したうち、車内に子どもが取り残されていた事例は全国で63件あったという

▼沖縄はまだ日差しの強い日が続く。「ほんの少しなら」「誰もいないはず」という楽観や憶測を排除し、誰一人車内に取り残さない決意を新たにしたい。

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