「民意を無視して辺野古強行」「沖縄の発展に尽力」…安倍元首相の国葬、沖縄県民の思いは

 米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設推進、南西諸島の自衛隊強化など、沖縄に関わる政策を押し進めた安倍晋三元首相。県民の思いに逆行する政策が多かっただけに、県内では国葬の実施に批判的な目が向けられた。一方、国への貢献や外交政策などを評価し、悼む声もあった。

 名護市辺野古の沿岸部では、国葬の日も埋め立て工事が続いた。辺野古出身で名護市内に住むケアマネジャーの女性(61)は「安倍さんはモリカケ問題、桜を見る会の疑惑を曖昧にしたまま逃げ、沖縄の民意を無視して辺野古新基地建設を強行してきた。税金を使って国葬をやるのが許せない」と、静かな口調に怒りを込めた。

 「安倍政権が沖縄のために何をしたのか。戦前に戻そうとしただけだ」と憤るのは、沖縄戦体験者の男性(85)=名護市。「安保法制や辺野古推進。安倍政権の時、何度となく戦争や復帰前のつらい記憶を思い返した」と、声を震わせた。

 沖縄市の女性(74)は、どう声を上げるべきか悩んでいたところ、市内で集会があると聞いて参加した。「国葬は私たちの税金を平気で使っている。もっと使い道があるはずだ」と怒りを込めた。

 先島は安倍政権下で自衛隊配備計画が進んだ。石垣市の半旗掲揚に市民から反対の声が上がる一方、竹富町竹富島の観光ガイドの女性(74)は「(安倍氏が)石垣島に来た際に会ったことがある。沖縄の発展のために尽力してくれた」と悼んだ。

 半旗を掲揚した南風原町役場を訪れた女性(28)=同町=は「国葬で使われる費用については賛成できない」としつつ、町の対応は「元首相が亡くなったことへのお悔やみなのでいいと思う」と話した。

 自民党県連が那覇市の同県連に設けた記帳台には続々と弔問客が訪れた。那覇市の自営業の男性(35)は「いろいろ議論はあるが、亡くなった人を追悼することは別だ。自分を犠牲にして国に貢献したことに感謝の思いを伝えた」と語った。南風原町の50代女性は「中国の脅威がある中、強い姿勢を示した政治家はいない」と外交を評価した。

(稲福政俊まとめ)

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