「理想は横浜F・マリノス」 元日本代表DF駒野友一が“現代サイドバック”について語り尽くす

現代サッカーにおいて非常に重要な役割を担うポジションとなっているサイドバック。

日本代表でも山根視来や中山雄太といったパス出しに優れたタイプの選手が台頭し、酒井宏樹や長友佑都とポジションを争っている。

そんな日本代表のサイドバックを長く務めた選手の一人が、現在FC今治でプレーする駒野友一だ。

2006年のドイツ大会、2010年の南アフリカ大会と、2度のワールドカップに出場。特に南アフリカでは右サイドバックのレギュラーを務めた。

そこでQolyでは、41歳になった今も成長を続ける元日本代表サイドバックを直撃!

インタビュー後編となる今回は、「偽ボランチ」といった現代サイドバックへの適応や、特長であるキックのこだわり、さらには41歳まで現役を続けられている秘訣や引退後のビジョンなどについて聞いた。

(取材日:2022年9月16日)

「偽ボランチ」にトライ中

――駒野選手が出場した南アフリカワールドカップが2010年。それから12年が経ち、サイドバックの役割がすごく変わってきたように思います。おそらくピッチ上でもっとも役割が変わったポジションの一つだと感じるのですが、駒野選手はそのあたりどのように感じていますか?

昔と比べると、「偽ボランチ」といった形が最近は、必要じゃないですけどそういうこともサイドバックとしてはもう一つの手段としてできるようになれば、と。

後ろからの組み立てや、相手にとって難しいポジションを取って繋ぎのところで入っていく。そういうところが今、サイドバックはプラスアルファされてきているのかなと思います。その理想というのが、横浜F・マリノスなのかなと思います。

――横浜F・マリノスが理想というのは興味深いですね。

Jリーグを見ていても、やっぱりマリノスだったり、川崎フロンターレだったり。「ザ・サイドバック」という形がどんどん崩れてきて、中央での繋ぎの部分に参加するといったように変わり始めているのかなと思います。

なので、自分だったらクロスが得意だというのはありますけど、今はそういう形ではなく、サイドハーフより中に入ってそこからスルーパスでアシストしたり、抜け出したりと、中での仕事が多い選手もいます。

――駒野選手は「偽ボランチ」にトライされていますか?

そこは身につけたというか…完全ではないですけど。まだ公式戦はそんなに入っているわけではないので。

練習でトライしていくことが大事ですし、何回かやったりはしますけど、うまくいったりいかなかったりを繰り返してやっています。

――「偽ボランチ」をやるにあたって重要なことは何でしょう?

やっぱりタイミングが一番大事です。最初から入ってしまうと変えられた時に繋ぎの部分で難しくなる時もありますし、本当にそこに入っていくのはタイミングだなと練習をやりながら思いました。

――“景色”がサイドバックとはだいぶ違うと思います。そのあたりの違和感は消えるものなのですか?

ありますね(笑)。中央に入れば、360度を見なければいけません。やはり後ろからとなると、まだまだ相手を意識してやらなければいけないと思っています。

――コーチングとかでも変わったところはありますか?

コーチングはそんなに変わっていないですね。ただ年齢を重ねて周りを動かすことは増えたかなと思います。

「こういうボールも蹴れる」と見せることの大切さ

――駒野選手のクロスは率直にすごく綺麗です。もともとキックが持ち味だったとは思うのですが、その中でもすごく“強み”にできた理由はご自身の中でどのように考えていますか?

ストライカーが身長の高いヘディングを合わせるタイプでも、身長が低い佐藤寿人選手のようなタイプでも、両方の選手に合わせられるところが自分の得意なところだと思っています。

――やはり佐藤寿人選手と一緒にプレーした経験は大きかったですか?

そうですね。自分のボールだけではないんですけど、寿人の動き出し、一瞬でマークを剥がす動きに練習で何度も合わせていたので、それが自分を成長させてくれたと感じています。

――クロスの際、駒野選手がゴール前の人と空間をどのように見ているのか気になります。空間があって、動いている人がいて、そこに走ってくる味方…。どこを見ながらどういう感じでクロスを上げているか、教えてください!

一番に考えているのは、味方が走る相手ディフェンスとゴールキーパーの間なんですけど、やっぱりFWが走っている前に出すこと。

後ろに出してミスするよりは、FWの走っている前に出してすり抜けていく。そちらのほうがミスしてもいいボールだと思います。

自分が「こういうボールも蹴れる」というのを見せないとフォワードも動いてくれないですし、そういうボールを見せることも大事です。

――駒野選手のプレーを見ていて、一つ一つのボールに次の選手がプレーしやすいよう、心がこもっているなと本当に感じます。やはりキックへのこだわりは強いものがありますか?

そうですね。やっぱりそれで選手生活を続けてきているわけなので。

精度が低くなってしまうと自分の特徴もそうですし、多分落ちてしまうとサッカー選手としては終わりなのかなとは思います。

――駒野選手はサイドバックだけでなくウィングバックとしての経験も豊富で、しかも右も左もやられていました。サイドバックとウィングバックの違いは外から見えづらい部分もあるのではないかと感じるのですが、そこの違いを駒野選手はどう捉えていますか?

サイドを1人でやる場合、攻撃なんかは特に1人でやることが多いですかね。守備だったら3枚の右サイドの選手がカバーしてくれたりしますが。

2人だったら連携のところで、お互いがポジションを取って片方がうまくスペースを空けて2人で崩したりとか。連係面が多くなるのが4-4-2なのかなと。3-5-2のような形で1人だと個人で打開したりする場面が多くなります。

――駒野選手は左サイドも問題なくというか順応してプレーされています。右と左の違いは?

どうしても利き足が右なので、繋ぎの部分では右足に持つことが多いです。左サイドでもどちらかというと右足でボールを扱うことが多いですね。

高い位置だと、左サイドでは中に入ってミドルシュートの回数も多いですし、右サイドでは右足のクロスの回数のほうが多いのかなと思います。

――両サイドできることはご自身の中ですごくメリットだったと感じていますか?

両方をやれることで選択肢が増えるので、自分にとってはプラスでしたね。

「誰にも負けたくない」という気持ち

――駒野選手は今年7月に41歳になりました。前十字靭帯断裂など大きな怪我も重ねてきたなか、41歳までプレーできている秘訣というか心掛けてきたことは何でしょう?

「サッカーを楽しむ」ということは忘れてはいけないと思います。

それと、長友佑都選手と似ているところもありますけど、この年齢になってもやっぱり「うまくなりたい」というか「誰にも負けたくない」。そういう気持ちは常に忘れずにやっています。

――そうしたなかで、プレーヤーではなくなった時、つまり現役を引退した後についてどのようなイメージを持っているか、うかがっても良いですか?

そこまでイメージはしていないですけど、指導者という意味では休みの日とかに子供に教えたり、子供の通っているチームを教えたりしています。

やっぱり昔に比べて今のほうが教える楽しさがあるというか、教えていて、自分の教えたことが身に付いて、プレーに出る。それが指導者としてすごく嬉しいことですし、その一つ一つを積み重ねて、チームが上手くなっていく。チームが強くなっていく。

何かそういったことも、実際やってみて楽しかったなというふうに思いました。

――最後に、FC今治のファン・サポーターに向けたメッセージをいただけますか。

シーズンが終わった時に昇格していて、僕が来た1年目のように(※JFLからJ3へ昇格)、ホームで昇格を皆さんと味わえるよう、自分たちはやらなければいけません。

来シーズンから新スタジアムができます。J2の舞台で“こけら落とし”ができるようにしたいと思うので、最後まで応援よろしくお願いします。

――本日はありがとうございました!

【動画】理想は横浜F・マリノス!?FC今治の元日本代表DF駒野友一が「現代サイドバック」について語り尽くす

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