佐世保行きの観光列車「36ぷらす3」10月開始の”新”月曜日ルートの楽しみ方、夜にはちょっとリッチな活用法も

JR九州の787系電車を改造して作られたD&S列車「36ぷらす3」。黒い車体がクールな観光列車として知られています(写真:ninochan555 / PIXTA)

JR九州のD&S(デザイン&ストーリー)列車「36ぷらす3」は、九州を1週間かけてぐるっと1周する観光列車。2020年から運行を開始し、曜日ごとに異なるコースを辿っています。

これまでの月曜日ルート”金の路”の運行経路は「博多~長崎間」でしたが、西九州新幹線の開業を機に行き先を変更。2022年10月3日(月)から「博多~佐世保」間で運行します。佐世保行きは各地でおもてなしを体験できる旅の魅力あふれる列車ですが、実は復路の博多行きもちょっとリッチな使い方ができるダイヤ設定になっているという話も……?

「36ぷらす3」木曜日~月曜日ルート(画像:JR九州の「36ぷらす3」専用ページから)

本稿では「36ぷらす3」新月曜日ルート、そして肥前浜や上有田、佐世保という街の魅力をご紹介します。

※2022年9月26日に行われた報道陣向けの試乗会で得た情報をもとに記事化しております。最新の情報や予約状況はJR九州「36ぷらす3」専用ページでお確かめください。また、肥前浜駅の様子など、過去の取材時に撮影した写真を一部使用しています(鉄道チャンネル編集部)

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新月曜日ルート「金の路」行程・停車駅は

「36ぷらす3」新月曜日ルートは、博多駅 11:22発 佐世保駅 16:13着の佐世保行き佐世保駅 17:31発 博多駅 20:06着の博多行きが設定されています。佐世保行きの途中停車駅は佐賀駅、肥前浜駅、武雄温泉駅、上有田駅、早岐駅。博多行きの途中停車駅は早岐駅、有田駅、武雄温泉駅、江北(旧肥前山口)駅、佐賀駅、新鳥栖駅、鳥栖駅です。

前出の図の金色の線を見ていただければ分かりやすいかと思いますが、月曜日ルートは往路と復路で運行区間が少しだけ異なります。往路は佐賀駅出発後、肥前浜駅まで寄りをしてから佐世保へ向かうという観光ルートになっており、本稿でご紹介するのはこの佐世保行き。復路の博多行きは途中停車駅こそ多いものの、観光要素は3号車のビュッフェ営業くらいのもので(夜ですし……)、佐世保方面から博多方面へ向かう人が利用できるちょっとリッチな特急列車という立ち位置です。

新月曜日ルート(佐世保行き)の料金は、博多 → 佐世保間の個室ランチプランが18,300円、座席ランチプランが13,300円、グリーン席プランが大人5,430円です。子供料金はもう少し安くなるほか、子供食事なしのプランなども用意されています(食事内容の詳細は下記項目をご確認ください)。

旅先を先取りできる絶品お弁当

「36ぷらす3」に乗車する際は、ランチプランを予約してみましょう(※事前予約が必要です)。食事内容は各曜日によって異なっており、個室と座席でも違いがあります。たとえば新月曜日ルート佐世保行きの個室で提供される「日本料理 ながおか」のお弁当はこんな感じ。

料理名を挙げれば博多のがめ煮、佐世保名物レモンステーキ、嬉野豆腐、松浦アジフライ、ながおか名物ごぼう餅……店主の長岡さんによれば「福岡、佐賀、長崎は世界屈指の食材の宝庫」だそうですが、沿線の美味しいものをたくさん詰め込むことで、旅先の予習と言いますか、美味しいものを先取りできるようになっています。

たとえばレモンステーキ。佐世保のアーケード街を少し歩けば、洋食屋だけでなく喫茶店など様々なお店がレモンステーキの看板を出し、その味を競い合っています。お弁当では冷めても美味しいよう工夫されて提供されていますが、現地なら焼きたてだって味わえる。

嬉野豆腐も現地の温泉街なら熱々のお出汁と一緒に食べられますし、鉄道ファンなら佐世保や有田・伊万里から松浦鉄道に乗ってアジフライを食べに行くのも面白いかもしれません。「旅先で何を食べようか?」と迷っている方は、お弁当を足掛かりに現地の食事プランを組み立ててみるのも良いでしょう。

なお、座席の方のお弁当はNishimura Takahito La cuisine creativiteが提供する「西九州を旅するフュージョンランチ」ということで、雲仙ハムや佐賀レンコン饅頭など、こちらも地元九州の食材を使って一品一品美味しく作られています。

肥前浜駅や上有田駅でおもてなし

肥前浜駅のおもてなしの様子(※写真は過去の月曜日ルート取材時のもの)

「36ぷらす3」新月曜日ルート(佐世保行き)で停車する肥前浜駅や上有田駅では、現地の方々によるお出迎えやお見送りなどの「おもてなし」が楽しめます。停車時間は肥前浜駅が約50分、上有田駅が約15分です。

運行初日となる10月3日には、肥前浜駅ではガイドによる街並み散策、「HAMA BAR」でのおもてなし、日本酒の利き酒体験、特産品の販売などが行われます。上有田駅では有田焼の展示や磁器の展示販売、有田焼磁器きっぷの販売、有田焼のガチャガチャ設置などが行われる予定です。

「HAMA BAR」内の様子。肥前浜宿は酒どころなので日本酒好きの方には特におすすめです(※写真は過去の月曜日ルート取材時のもの)
肥前浜宿の酒蔵通りは酒蔵ツーリズムの名所(※写真は過去の月曜日ルート取材時のもの)
上有田駅のレトロな駅舎
乗車券としての効力はありませんが、初日便にあわせて有田焼磁器きっぷなどを販売します
有田焼のガチャガチャもありました。「箸置き」「ぐい呑み」「ストラップ」などが普通に買うより安く手に入ります
10月3日の運行初日は乗車された方に「39クッキー」をプレゼント

余談ですが、「肥前浜駅」の停車は旧月曜日ルート(博多~長崎間)でも採用されており、これが西九州新幹線と同時にデビューしたD&S列車「ふたつ星4047」や、今回の「36ぷらす3」新月曜日ルートでも継続されるかたちです。

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「36ぷらす3」で味わう佐世保の魅力 夜の博多行きでちょっとリッチな使い方も

報道向け試乗会当日の佐世保駅お出迎えの様子

途中停車駅でのおもてなしを受けながら、「36ぷらす3」は16:13頃に佐世保駅へ到着します。運行初日となる10月3日には、ご当地キャラクターである「佐世保バーガーボーイ」によるお出迎えのほか特産品ブースの開設なども予定されています。

長崎県第二の都市、佐世保は軍港の街として栄えた歴史を持ち、旧海軍の拠点である鎮守府が置かれた他の三都市(横須賀、呉、舞鶴)同様、海軍の足跡が残ります。土日祝日に行われている軍港クルーズ、米海軍基地から伝わった佐世保バーガー、針尾送信所などは、佐世保特有の魅力と言えましょう。

佐世保駅みなと口のすぐ目の前には本格的なターミナルが。同じ港の街でも「長崎」とは少し毛色が異なります
戦時中の防空壕を活用して作られた「とんねる横丁」は佐世保の台所と言われています

また、佐世保を県北の観光地への足掛かりとする手も。たとえばフェリーで五島列島へ向かったり、松浦鉄道で玄海灘へ訪れてみたり……といったプランも面白いでしょう。宿泊施設も長崎県の中では多い方ですから、「36ぷらす3」の佐世保行きに乗るなら一泊以上滞在して余裕をもって県北を楽しむのがベストです。

昼の佐世保も良いですが、夜の弓張岳展望台から佐世保市街地を眺めると、素敵な夜景を楽しめます(写真:まちゃー / PIXTA)

岡田貴就佐世保駅長によれば、夜の博多行きで「36ぷらす3」を利用するのもおススメだそうです。往路とは異なり沿線でのおもてなしなどはなく、個室や食事付きプランの販売もありませんが、3号車のビュッフェでお買い物することは可能ですし、グリーン席でゆったりと博多駅まで帰ることができます。

復路の「36ぷらす3」博多駅到着時刻は20:06。岡田駅長は「かなり訴求力のある設定ではないか」と語りますが、それもそのはず、これは博多~新大阪駅間の山陽新幹線最終列車に余裕をもって間に合うダイヤであり、福岡空港~羽田空港間の最終便も利用できます。土日に佐世保を観光し、更に延泊して月曜日に帰る際に「36ぷらす3」に乗車する、そんな旅の締めくくり方も楽しそうですね。

もちろん、武雄温泉駅で開業したばかりの西九州新幹線「かもめ」に乗り換えてみたり、先に挙げた観光列車「ふたつ星4047」で長崎・佐賀の観光を楽しむのもアリ。「36ぷらす3」で最高の佐世保旅をご堪能下さい。

記事:一橋正浩

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