受取額が積立額の倍以上になることも。「お宝保険」の正体と受給金額をアップする方法とは?

バブル期に社会人になったひとの多くは現在60代を迎えています。社会人になったと同時に退職後に向けて、個人年金保険や積立傷害保険をすすめられ、コツコツ積立てた経験を持っています。

終身雇用制が当たり前、職場に保険営業マンが自由に出入りできていた時代に、右も左もわからずに始めたであろう保険。途中で解約することなく、受取時期を迎える人の受取額は、今では考えられないような大きな額となり、お宝保険になっています。ありがたく受取る前に、もうひと手間かけることで、さらに増やす方法があることをご存知でしょうか。具体例で説明します。


どんな保険がお宝保険?

お宝保険とはどのような保険でしょうか。

ひとつは、個人年金保険。仕組みとしては、老後の公的年金の上乗せとして、毎月積立をし、60歳あるいは65歳まで積立期間が完了した後、決められた期間(5年、10年などを選択)毎年年金を受取る保険です。

現時点では、預貯金の利息が下がり続けていることに伴い、保険の利率も1%を下回っており、お宝保険とはいいがたい保険になっています。個人年金保険のメリットとしては、生命保険料控除が別枠でもうけられているため、貯金をすることで節税効果があることです。また、利率が低いとはいえ、積み立てた額は、一定期間老後確実に手もとに振込まれるので、手堅い貯金といえます。
現在は1%に満たない利率ですが、バブル期には5%を超える商品もありましたので、25歳に加入し、60歳まで積立をするようなケースでは、受取額が積立てた累計保険料の倍以上になるケースも珍しくありません。

下記と同様にお宝保険で35年積み立てた場合の試算を出すことは可能でしょうか?

たとえば現在の商品で、個人年金保険料1万円を35年積立てた場合、累計保険料は420万円。10年間受取る年金額は435万円。受取額は保険料の104%と微増ですから、当時の個人年金保険はまさしく「お宝保険」といえましょう。

もうひとつは、積立傷害保険です。

こちらは生命保険ではなく、損害保険会社が販売していた傷害保険です。ケガによる死亡や高度障害を補償する保険(積立金額により補償金額も増加)で一定期間積立てた後、5年据置期間があり、5年間給付金を支払う仕組みです。

筆者自身も加入していましたが、保険料累計が約150万円に対し受取額はほぼ倍の300万円です。個人年金保険と違い、損害保険会社各社は積立利率の低迷に伴い、積立商品を販売停止していますから、商品自体存在しないお宝で幻の保険になっています。

なんとなく積立てていた保険が、大きな給付額となって、給付開始の連絡がくれば、大変ありがたく、早速受取を始めてしまうかもしれません。ただ、この時点で生活資金に不足がなく、受取らなくても生活に支障がないようであれば、個人年金保険に関しては、ひと手間かけて、さらに受取額を増やす方法があります。

繰下げ受給を活用する

公的年金の繰下げのように、個人年金の受取開始時期を遅らせる方法です。

保険会社各社保険商品により規定が異なりますから一概にいえませんが、多くの保険会社で受給開始の繰下げができます。繰下げられる年数は1年から5年くらい。年金受給開始のお知らせが届いたら、取扱い担当者へ問合わせるか、コールセンターへ電話してみましょう。

どのくらい受取金額がアップするのでしょうか。具体的に試算してみました。

15年前50歳に加入し、65歳からの公的年金の上乗せとして受取る予定のAさんの例です。

加入が平成20年ですので、利率は1.75%程度。「お宝保険」とはいえませんが、1.75%の利率でも試算してみると受取額がかなりアップすることがわかります。

Aさんは子どもが独り立ちし、生活資金に余裕が出始めた50歳から、月額5万円の積立を公的年金受給開始の65歳まで15年間の個人年金保険を始めました。支払保険料累計は9,000,000円。65歳から受取る年金額は983,500円、10年間で9,835,000円の受取額となります。あと半年ほどで受取開始になりますが、現役で仕事をしており、受取を繰下げても生活に支障がないことから、5年繰下げの試算をしてみました。

5年繰下げ後の年金額は1,061,530円となり、年額78,030円増えることがわかりました。受給期間は10年ですので、780,300円多く受取ることができます。Aさんの個人年金の利率は1.75%でしたが、3%以上の利率の個人年金保険に加入していて、受取開始がこれからというひとも多くいらっしゃるはずです。

受給開始が近くなってきたら相談

毎年保険会社から送られてくる、契約のご案内には、残念ながら受給開始繰下げの案内はありませんし、保険会社のオフィシャルサイトにもあまり表示されていません。受給開始が近くなっているひとは、保険担当者に直接きいて、試算してもらうのが早道です。

加入当初は公的年金開始や定年が60歳だったため、受取開始も60歳で契約している個人年金が多いですが、時代とともに定年が65歳になり、その後も仕事を続けるひとが多くなっています。繰下げの規定が設けられている保険でしたら、ひと手間かけ、増やしてから受取ることを考えてみてはいかがでしょう。

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