言葉のはやり廃り

 気持ちがすごく冷めることを昨今は「ドン引きする」という。「どうだ」と言わんばかりのしたり顔は「どや顔」、笑いが取れない時は「スベる」…。どれもお笑いコンビ、ダウンタウンの松本人志さんが世に広めたとされる▲「スベる」はもともと関西限定だったらしい。関東ではその昔、「ネタを外す」と言ったが、「スベる」の方が救われる気がする、と別の芸人がテレビ番組で語っていた▲足を滑らせ、すてんと転ぶような「スベる」の語感が心を軽くさせるのかもしれない。表現しづらい感情や様子を、軽妙で覚えやすいひと言に“変換”する-。新語、造語が生き残るための秘訣(ひけつ)だろう▲「中途半端でない」ことをいう「半端ない」が気にならないのは6割に上るという。文化庁が先ごろ発表した「国語に関する世論調査」の結果だが、さて、皆さんはいかがだろう▲新型コロナにまつわる言葉にも「はやり廃り」がある。調査では「おうち時間」「黙食」を「そのまま使うのがいい」と受け入れる人が多数派だったが、ワクチンの追加接種を指す「ブースター接種」などは定着には程遠い▲おととしから「不要不急」「3密」「ステイホーム」と耳慣れない言葉が出てきては広まる。心を軽くする「コロナ後」の新語、造語をこの欄に書ける日が待ち遠しい。(徹)

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