市長のツイート

 賛否、抗議デモ、分断、亀裂-。本来あるべき「厳かな」という形容には程遠いと言うほかない言葉が並んだ。安倍晋三元首相の国葬を伝える昨日の新聞▲この事態を引き起こしたのが、ひとえに岸田文雄首相の拙速な決断だったことは一昨日も書いた。その首相は葬儀委員長として国葬に臨み「全ての人が輝く包摂的な日本、地域、世界をつくっていくことを誓う」と弔辞を結んだ▲国葬の強行で社会の分断を露見させた張本人がいったいどの口で「包摂的」などと言うのかと一瞬は考えた。少したった後、その反省を込めた“再出発”の決意を読み取るべきなのかもしれない、と思い直した▲県市長会の代表として国葬に参列した黒田成彦平戸市長のツイートが話題を呼んでいる。一般献花者の列がすごい、と感想を伝えた家族のメールに呼応して〈反日勢力よ、この静かな反撃を直視せよ!〉と発信した▲「反日勢力」「反撃」とは強烈な言葉を選んだものだ、と率直な感想を持った。が、どんな言葉を選ぶことも、どんな政治的立場に立つことも個性であり、自由である▲その前提を崩すわけにはいかない。それでも思う。公人だ。できることなら「分断」の片棒を担ぐ側ではなく、「亀裂」に胸を痛め、修復に心を砕く側に立ってはもらえなかったか、と。(智)


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