別離した48歳会社員の男性「3年後に早期退職して夢だった海外暮らしを実現させたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、48歳、会社員の男性。3年後に早期退職をして、夢だった海外暮らしを10年ほどして日本に戻りたいという相談者。資金は足りるのでしょうか? また注意することは? FPの飯田道子氏がお答えします。


48歳会社員です。5年前に離別し、今後も再婚するつもりはありません。子どももおらず背負うものはないので、3年後に早期リタイアして昔から夢だった海外移住(インドネシアかベトナム)を実現したいと考えています。10年くらい住んで日本に戻るとした場合、老後資金は足りるでしょうか。

場合によっては、今住んでいる家を売却することも考えています。住宅ローンは、物件購入額4,000万円、借入額3,700万円、金利0.75%、返済期間7年(残り28年)、残債2,980万円です。

老後資金は、公的年金18万円/月(定年退職の場合)、退職金有1,600万円(3年後に退職した場合)を見込んでいます。

積立投資は、米国のインデックス投資に毎月5万円(つみたてNISA含む)しております。

【相談者プロフィール】

・男性、48歳、会社員、独身(離別)、子どもなし

・お住まいの都道府県:神奈川県

・住居の形態:持ち家(マンション、関東地方、一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:350万円

・毎月の世帯の支出の目安:27万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:5,000円

・保険料:3,000円

・通信費:2,000円

・お小遣い:3万円(飲み代)

・その他:7万円(医療費1万円、日用品1万5,000円、書籍5,000円、娯楽3万円、その他1万円)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:13万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:300万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,200万円

・現在の投資総額:2,900万円

・現在の負債総額:2,980万円

飯田:今回は、アーリーリタイアメントをして、海外へ移住。その後、日本へ戻って暮らすことを考えている相談者様です。現在48歳の相談者様は、3年後に早期に会社を退職し、かねてから憧れだった、インドネシアかベトナムへと海外移住を考えているそうです。そこで気になるのが、その後の生活。10年後に日本に戻る場合には、老後資金は足りるのかを心配されているようです。相談者様の場合、老後資金は足りるのでしょうか。また、計画を進めるためには、どのような点に注意すると良いのでしょうか?

資金はどうなる?

現在の投資額と預貯金額は、4,100万円。年間の貯金額は、毎月の投資額5万円、毎月の貯蓄額13万円、ボーナス300万円となっているため、年間516万円となり、3年で、1,548万円です。

これらのことから、3年後の資産は5,648万円となっています(投資の変動については考慮せず)。さらに退職金1,600万円を加えると、この時点で手元に7,248万円ある計算になります。

インドネシアかベトナム、どちらが現実的?

3年後に移住し、移住後10年経ってから帰国した場合の相談者様の年齢は61歳です。移住した場合、現地での生活費の他、日本の住まいにかかる固定資産税や電気光熱費などがかかることになります。

移住先によってかかるコストは変わってきますが、インドネシアの場合、リタイアメントビザは55歳にならなければ取得することができません。また、そもそもベトナムにはロングステイビザがないため、どのようなビザを取得して現地で暮らすのかを決めなければ、何も始まりません。

ただし、インドネシアにはロングステイビザの他に、投資家ビザがあります。また、ベトナムにも投資家ビザがありますので、投資家ビザを取得することで、早期に移住することも可能です。

相談者様は、アーリーリタイアメントを希望とのこと。恐らく、現地でも働かないことを考えていることでしょう。それならば、少なくとも55歳以降に移住(インドネシア)することを検討したほうが良いのではないでしょうか?

55歳に移住した場合には、さらに資産は増えて7,712万円になりますし、受け取れる厚生年金額や退職金の1,600万円も増えることが見込まれますので、ゆとりが生まれます。

現地での生活費、日本でのコストを考える

本来の予定通りに何らかのビザで移住した場合、日本に帰国するのは61歳です。

61歳では、日本の公的年金はまだ受け取るタイミングでないため、働いて収入を得なければ、単純に収入を切り崩すことが必要です。50歳になると、ねんきん定期便で、今以上に詳細な情報を確認することができます。まずは、その金額を確認するようにしてください。

また、現在の住いは売却してもOKとのことですが、賃貸に貸し出すことも想定して、収入を得た場合もシミュレーションしてみましょう。

【インドネシア・ロングステイビザ発給要件】
・満55歳以上
・健康保険、生命保険に加入していること
・月額$1500以上の年金受給者または支払い能力のある人
・使用人としてインドネシア人を雇用する
・指定された地域で月額500$以上(米ドル)の宿泊施設を借りる
・保証人を得る(指定された旅行代理店にお願いする)

インドネシアの人件費は、日本に比べて割安です。日本円で月額5万円もあれば、充分に雇用することができます(1人あたり)。

1$(米ドル)140円とした場合、家賃7万円、人件費5万円、その他、自分の生活費として8万円かかる場合、月額20万円必要になります。

現地では年間240万円。10年で2,400万円かかることになります。日本でかかる費用を10万円とした場合は、年間120万円。10年で1,200万円かかります。現在の預貯金額から考えても、資金計画に無理はありませんので、移住は可能でしょう。

海外移住は行きやすく帰りやすい状態にするのが鉄則

以前から海外移住を考えていたとのことですので、すでにいろいろなことの情報を収集していたり、現地について学んでいることでしょう。

海外移住をする場合、忘れてはならないのは、海外へ行きやすく・日本へ帰りやすい状態を確保して、おくことです。

いくら情報を収集して理解していても、頭で理解したことと、実際に暮した場合には何らかのギャップが生じることは少なくありません。そのような場合、いかにギャップを埋められるのかがカギになります。もちろん、ギャップが埋められないまま海外で暮らしていても、不自由に感じたり、暮らしそのものに不満に思ったりすることがありますので、注意が必要です。

何よりも、そのようなケースに陥らないことが大切ですが、万一のときに備えて、日本での住まいを確保しておくことをおすすめしています。

また、私たちが知ることのできる情報は限られており、少ないお金でゴージャスに暮らせる、生活コストがかからなく楽しいなどのポジティブな情報がほとんどです。実際に、そのように暮らしていらっしゃる方もいらっしゃるのですが、理想と現実の違いから、日本に帰国する人は少なくありません。海外移住をするときには、観光ではなく、必ずお試しロングステイをして、滞在先を決めることが重要です。

ビザの発給要件はよく変わる!?

現在はコロナが収まらないこともあり、各国でビザ発給を停止したり、変更が見られます。それ以外にも、急な発給内容の変更は少なくありません。

まずは、どの国へ行くのかを明確に決めてから、どのビザを取得するのかを決めることです。ビザの発給手続きには、ある程度の時間を要します。できるだけ早く、動くことが必要です。

憧れの海外暮らしは、必ずしもロングステイビザ等を取得しなければならないという訳ではありません。

現地でコンドミニアムを借りて、暮らすように滞在する方法もあります。一時的には、お金がかかり損をするように思えるかもしれませんが、好きな場所に、好きなだけ滞在する方法でも、充分に海外暮らしを満喫することができます。

まだ、時間はあります。自分が現地で何をしたいのか、どのような暮らしをしたいのかを考えてみてください。ぜひ、夢を叶えてくださいね。応援しています。

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