NISA口座の変更方法、切り替えを検討すべき人と具体的な手続きをFPが解説

NISAは運用益に対する非課税期間を管理するために、非課税枠が年単位で設定されます。そのため、金融機関の変更や一般NISAとつみたてNISAの切り替えも年に1回と制限があります。

今回は、2023年からの新しい運用に間に合う手続きの方法を解説します。


こんな方は変更を検討

投資で得た利益に税金がかからないと人気が高まる少額投資非課税制度「NISA」には、一般NISAとつみたてNISAの2種類があります。ここでは、2023年末に廃止されるジュニアNISAについては説明を割愛します。この2つは両方を同時に使うことができず、必ずどちらか一方を選ぶ必要があります。

一般NISAの非課税期間は5年、つみたてNISAの非課税期間は20年と、それぞれ異なります。また1年間に投資できる金額は一般NISAが120万円まで、つみたてNISAは40万円までです。前者では個別株も買えますが、後者は金融庁が設定した基準をクリアした投資信託しか購入できないなど、ルールが異なります。

しかし「NISA」という言葉だけでそれぞれの違いについて十分な比較検討を行わずにはじめてしまう方も多く、あとから「思っていた内容と違うかも」「私には合わなかったかも」と疑問を持つ方も少なくありません。そういう場合、NISAの切り替えを検討しましょう。

例えば、一般NISAの非課税期間終了時の判断が難しいとおっしゃる方は、つみたてNISAの方が合っているかもしれません。一般NISAで投資をしていると、5年の非課税期間が終了間近になると、「売却するか、ロールオーバーするか、課税口座にうつすか」の三択が迫られます。

「せっかく運用がうまくいっているのに、ここで売却するのはもったいない。かといって、ロールオーバーすると新しい年の投資枠を消費するので、それももったいない。でも課税口座にうつすタイミングで、値が下がってしまったらそこから元に戻っても課税されるなんていうのも悩ましい。毎年こういう悩みが繰り返されるなんて、ちょっとムリかも」という声もよく聞きます。

逆に、「投資にも慣れてきたので、もっと研究していろいろな企業の株を買ってみたい。日本の会社だけではなく、アメリカ株への投資もチャレンジしたい。ETFやREITにも興味がでてきたので、積極的に投資をしたい。」という方もいます。

その場合は一般NISAからつみたてNISAへ、つみたてNISAから一般NISAへの切り替えが可能です。

また勧められて口座は開いたものの、銀行では株が買えないことを知ってがっかりしたとか、金融機関ごとにつみたてNISAの投資信託の選択肢が異なることを知らず、希望の投資信託が購入できなかった、という場合は金融機関の変更も可能です。

具体的な変更手続き

一般NISAもつみたてNISAも、金融機関の変更手続きは1年に1回です。一度でもその口座で買い付けを実行すると、もう年内での変更はできず、翌年からの変更となります。手続きは、10月1日から翌年の9月30日までの期間内に行う必要があります。従って、来年1月から新しい金融機関、新しいNISAで運用をスタートしたい場合、今まさに手続きのタイミングだと言えます。

現在の金融機関で、一般NISAからつみたてNISAへ、つみたてNISAから一般NISAへの切り替えを行う場合は、取引金融機関に「非課税口座移動届出書」を提出します。手続きとしてはシンプルですが、2023年から新しい口座で投資を始めたい場合、手続きの締め切りがありますから、スケジュールを確認して余裕をもって手続きを行いましょう。

金融機関の変更を行う場合もスケジュール管理は重要です。金融機関によっては、手続き完了までの日数が思った以上にかかって2023年スタートが間に合わなかったとならないよう、早め早めに行動しましょう。

最初に、現状の金融機関における口座を廃止する手続きを行います。「金融商品取引業者等変更届出書」に本人確認書類等を添付して返信すると、金融機関が確認した上で、「非課税管理勘定廃止通知書」が届きます。この通知書は新しくNISAを始める金融機関に提出しますので、いったん保管します。

次に新しい金融機関で口座開設の手続きをします。これまで取引があった金融機関であれば、一般NISAかつみたてNISAの希望する方の口座のみの開設で済みますが、全くはじめてという金融機関では、総合口座を開設したうえで、一般NISAあるいはつみたてNISA口座を開設します。手続きが完了すると、「非課税口座開設届出書」が送付されます。

この書類に必要事項を記入し、先の金融機関から届いた「非課税管理勘定廃止通知書」と共に新しい金融機関に提出をすると、手続きは完了です。

NISA口座は一人一口座なので、これまでの口座を廃止したことを確認した上で、新しい口座を開設する必要があります。少し面倒ですが、税務署の審査があることも含め、あらかじめ変更のステップを知っておくとスムーズでしょう。

変更に際して、覚えておきたい注意点

金融機関を変更すると、これまで使っていたNISA口座はどうなるのかといったご質問をよく受けます。以前使ったNISA口座はなくなる事はありません。一般NISAであれば、そのまま非課税期間を最後まで利用して投資が継続できます。ただし、ロールオーバーはできません。なぜならば、資金の受け皿となる口座が別の金融機関にあるからです。従って、非課税期間内で売却をしないのであれば、その金融機関の課税口座に移ります。

つみたてNISAも同様に、以前購入した投資信託は、20年間の非課税期間中は以前の金融機関でそのまま運用が継続されます。ご自身のタイミングで売却もできます。いずれにしても金融機関を変えたからといって、過去の運用が不利益を被ることはありません。

一般NISAからつみたてNISA、つみたてNISAから一般NISAに切り替えた場合も、過去分についてはそのまま継続されています。ここでも切り替えにより、過去の運用が不利益を被ることはありません。

ただし、管理は少し複雑になります。金融機関を変更すれば管理画面は複数になりますし、NISA口座を切り替えれば投資した年によって非課税期間が異なることになります。

ご承知の通り、NISAについては今後拡充が期待されており、ルールが変わることもありそうです。とはいえ、年の途中で新しい仕組みに切り替わることはありませんから、今できる最善の方法を選択されることをオススメします。

最近はNISAとともにiDeCoへの感心も高まり、非課税制度をフルに活用しようという意識の方が増えてきました。それは喜ばしいことですが、非課税にばかり気を取られて、課税口座を嫌う傾向もあるようです。資産形成の本来の目的は、ご自身の人生をより豊かにするためですから、非課税枠だけで終わらず課税口座も有効に活用していきましょう。

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