「いつか夢はかなえられる」 定時制、通信制高生が体験発表 最優秀に野口さん(五島高定時制3年)

「いつか夢はかなえられる」と力強く語る野口さん=長崎市、鳴滝高

 長崎県内の定時制、通信制高校に通う生徒の「生活体験発表大会」が2日、長崎市鳴滝1丁目の県立鳴滝高で開かれた。「夢が叶(かな)うその瞬間まで」と題して語った県立五島高定時制3年の野口聖哉さん(18)が最優秀賞の「県知事賞」に輝いた。11月に東京で開かれる全国大会に県代表として出場する。

 「今よりも小さな手で握られたクレヨン。家で一人っきりでグルグルと描くその線は、子どもながらどこか迷っているようでした」。野口さんは幼い頃、絵を描く人になることが夢だった。
 家は母子家庭で金銭的に安定せず、行きたい高校を諦めて今の高校に進学。アルバイトをしながら学校生活を充実させようと積極的に活動する中で、再び絵を描くようになった。友人に褒められ、絵が評価される喜びを知り「私だけが描ける作品を残したい」と思うように。だが、絵やデザインを学ぶ学校は、費用面などからまた諦めることになった。
 「しかし、決して夢を諦めたわけではありません。今は実現しなくても、いつかかなえられる」と野口さんは力を込める。「今すぐにかなわなくても夢は逃げません。逃げるとしたらそれは自分自身の心が夢から逃げたのです」。さらに、思うように生きられない人やつらい気持ちを持っている人たちにも「大丈夫。苦悩に立ち向かった私たちだからこそ、きっと明るい未来をつくっていけるはず」とエールを送る。
 野口さんは最後に真っすぐと前を見つめ、こう締めくくった。「今の私が描く線は、幼い頃のグルグルと描く線とは違います。夢に向かって真っすぐ、何の迷いもなく、ただがむしゃらに伸びていける。夢がかなう、その瞬間(とき)まで」

 大会は県高校定時制通信制教育振興会が主催し、毎年開催。今年は8校から15人が出場し、7分の持ち時間で学校生活や職場での経験から学んだこと、将来の夢などを語った。ほかに、鳴滝高通信制4年の酒井香菜さん(27)が県教育長賞、佐世保中央高夜間部3年の桑原菜摘さん(19)が振興会長賞に選ばれた。


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