<南風>ノーベル賞とOIST

 3日夜にノーベル医学生理学賞が発表された。受賞したスバンテ・ペーボ教授は沖縄科学技術大学院大学(OIST)にも在籍している。なんて素晴らしいことだろうと率直にニュースを聞いてうれしくなった。

 一方で、内閣府は9月にOISTの今後の課題を議論する検討会を開いた。財務省が6月に公表した予算執行調査で「高コスト構造」と指摘したことに対して検討するためだ。今回のノーベル賞受賞を受けて、果たして政府のその後のOISTに対する見解はいかほどかぜひ聞いてみたい。

 以前、獣医師会の仕事でOISTのナンバー2の方と1人の研究者の方と一緒に仕事をしたが、判断の速さ、柔軟性、発想力、人間力、全てに感銘を受けた。

 研究に金がかかるのは当然。成果や結果が出るのも時間がかかる。何にお金を投じてみるかはもはや賭けみたいなものだ。私も琉球大学で社会人大学院生として博士課程を経たので研究者の端くれとしてその意味は理解しているつもりだ。

 では、何が大事なのか。それは、その施設の風土や理念だと思う。

 世界中から優秀な研究者が「来たい」と思う施設が日本の沖縄にあることを誇るべきで、批判の対象にするべきではない。東大を抜いて世界第9位の施設が沖縄にあることを沖縄県民はもちろん日本国民がどれだけ知っているだろうか。政府の役割はそのような素晴らしい施設があることを国民や世界に広く知ってもらうことではないだろうか。

 農水省職員も経験した私としては、もちろん限られた予算の中で組まざるを得ない財務省の懐事情はよく理解できる。それは彼らの仕事だからだ。だからこそ政治判断が必要なのである。ぜひとも今回の事例が、多くの優秀な研究者と、日本の未来の研究者にとって好材料となることを切に願う。

(周本剛大、琉球動物医療センター院長 沖縄VMAT隊長)

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