証券口座は複数持つべき? 証券会社選びのポイントをお金のプロが解説

証券会社では、株式投資をはじめ、さまざまな金融商品の取引ができます。でも、証券会社ならどこでも同じかといえば、そうではありません。自分のしたい投資に合わせて証券会社を選べば、投資がよりお得で有利になるでしょう。

証券会社はたくさんあるので、証券口座は複数持つべきなのかという疑問もあることでしょう。

今回は、証券会社選びのポイントや、証券口座の組み合わせ方もご紹介します。


店舗型証券、ネット証券、スマホ証券どれを選ぶ?

証券会社は、営業の仕方や取引の方法などによって、店舗型証券・ネット証券・スマホ証券の3種類に分けることができます。

店舗型証券・ネット証券・スマホ証券のおもな違い

店舗型証券は、街の中に店舗を構えて営業している証券会社です。店舗型証券の窓口に足を運ぶと、営業担当者が投資の相談に乗って、アドバイスをしてくれます。

ただ、店舗型証券の手数料はネット証券・スマホ証券よりもずっと高いので、利益を出しにくくなってしまうのがデメリットです。

ネット証券は、実店舗を持たずに営業している証券会社です。実店舗がないため、店舗の固定費や人件費などが節約できます。商品の品揃えも豊富で、特に投資信託や外国株などは数千本(数千銘柄)扱っているようなネット証券もあります。対面でのアドバイスは受けられませんが、投資に関する情報が充実しているので、それを踏まえて投資の判断をすることができます。ネット証券の売買の注文は、スマホのアプリやウェブサイト、パソコンなどからできます。手数料は店舗型証券よりとても安く、条件を満たせば無料になる場合もあります。

スマホ証券も、ネット証券同様に実店舗を持たずに営業している証券会社です。スマホ証券では、スマホだけで口座開設から取引まですべて完結するのが特徴。各社のアプリもスマホでの売買に特化していて、わかりやすいデザインになっています。株式を1株単位、1,000円単位といった少額で投資できるところも多くあります。

「株式投資の売買手数料」では各社の差がつかなくなってきた

証券会社選びのポイントとして、昔からよく取り上げられるのは、株式を売買するときに証券会社に支払う売買手数料です。

株式投資の売買手数料には、売買注文が成立(約定)するたびに、約定した金額に応じて手数料がかかる「1回ごと」と、1日の売買金額の合計に応じて手数料がかかる「1日定額」があります。多くの証券会社では、どちらかを選ぶことができます。株式そのものは、どの証券会社で買っても同じですから、株式投資の売買手数料が安ければ安いほど利益が出しやすくなっていい、というわけです。

しかし、近ごろは「1日100万円までの取引なら売買手数料無料」などとする証券会社が増えてきました。こうなると、たとえば「ときどき少額の取引をする(1日1〜2回程度の売買しかしない)」人ならば、どの証券会社を選んでも差がつきません。

ネット証券の1回ごとの手数料は3社とも同じ。1日定額でも0円が2社あります。

この表ではスマホ証券の1回ごとが割高に見えてしまいますが、PayPay証券では1,000円から、LINE証券は1株から購入可能で、例えばPayPay証券で1,000円だけ買うときの手数料は5円程度になり、少額投資をする分にはとても安くなることがわかります。

では、証券会社によって違いがある項目、証券会社を選ぶ際に決め手となりえるポイントには、どんなものがあるのでしょうか。5つ紹介します。

証券会社選びのポイント1:経済圏でお得か

経済圏は、特定のポイントが貯められたり、使えたりするサービス群のことです。日々の買い物やネットショッピング、銀行やクレジットカード、さらにはスマホ・保険・旅行などにいたるまで、同グループ(同じ経済圏)のサービスを活用することで同じポイントを貯めることができます。貯めたポイントは1ポイント=1円などで買い物に利用できるので、支出削減に役立ちます。みなさんも、何かしらポイントを持っている(貯めている)のではないでしょうか。

証券会社のなかには、こうした経済圏の一部となって、ポイントが貯められたり投資できたりするところがあります。たとえば、株式投資の売買や投資信託の積立によってポイントが貯まったり、他のサービスで貯めたポイントを投資代金・手数料に回したりできる、というわけです。また、ポイントそのものを投資に回すことで、お金の持ち出しゼロで株などを購入できるサービスも登場しています。

普段、生活するなかでよく貯めているポイントがあるならば、そのポイントを貯めたり使ったりしやすい証券会社を選ぶことで、経済圏がますますお得に活用できます。

証券会社選びのポイント2:スマホで投資しやすいか

今やどの証券会社も、スマホを使っていつでもどこでも取引・資産管理ができるようになっています。各社のスマホアプリも充実してきていますが、その中身は各社異なります。

一般的に、スマホのみの取引に特化した「スマホ証券」のほうが、手軽でわかりやすい表示になっています。数タップですぐに売買できるよう、工夫されているアプリも多く見受けられます。デザインも洗練されていて、投資の知識が少なくても投資先選びに迷わないような配慮がされています。

それに対して、スマホだけでなくパソコンなどでも取引できる「ネット証券」は、投資の情報が充実している印象です。株式投資でいえば、最近の株価動向・関連ニュース・決算情報・株主優待などまで、細かくチェックできます。また「会社四季報」など、本来有料の情報を無料で公開しているネット証券もあります。

どちらがいいかは好みもあるので、意見が分かれるところでしょう。一番いいのは、複数の証券会社のスマホアプリを実際に使ってみて、確かめることです。証券会社の口座開設は無料でできますので、試してみるといいでしょう。

証券会社選びのポイント3:1株投資ができるか

株の売買は通常、100株単位(単元株)で行います。しかし最近は、1株(単元未満株)から買えるサービスが普及してきました。

たとえば通常、株価が1,000円の銘柄を買うには100株分となる10万円を用意する必要があります(手数料は考慮しません)。しかし、1株から購入できれば、投資金額も100分の1の1,000円で済む、というわけです。上でも紹介しましたが、手数料も数円程度と非常に安くなっています。

単元未満株のサービスは、おもにスマホ証券で行われています。スマホ証券では、手数料も安く設定されているうえ、ポイントを使った投資にも対応しています。また、ネット証券にはあまりない独自のキャンペーンを実施していることもあります。より少額から手軽に投資を試してみたい方は、スマホ証券のサービスをチェックしてみましょう。

証券会社選びのポイント4:米国株の取り扱いがあるか

世界経済の中心でありながら、いまなお成長を続ける米国。米国株は、文字どおりアメリカ合衆国で取引されている株のことです。

米国には、世界をリードする大企業がたくさんあります。しかも、米国企業の多くが年4回配当を出すなど、株式還元にも積極的です。そのうえ、過去のコロナショックやリーマンショックなどにも負けずに、50年以上にわたって毎年配当金を増やし続けている「連続増配株」もあります。

米国株は、日本の証券会社でも売買ができますが、すべての証券会社で売買ができるわけではありません。そもそも取り扱いのない証券会社もあります。

米国株の取り扱い銘柄数は、多い証券会社では5,000銘柄以上あるのに対し、少ない証券会社では数十銘柄。欲しい銘柄があっても取り扱いがないので購入できない、という事態も考えられます。米国株の売買手数料・為替手数料は、日本株の売買よりも総じて高めに設定されています。こちらも証券会社ごとに違いがあります。もちろん、安く済むほど投資には有利ですので、比較することをおすすめします。

証券会社選びのポイント5:IPOの取り扱い銘柄数が多いか

IPO(新規公開株)とは、未上場の企業が株式市場に上場すること。企業が株式市場に参加し、投資家に株を買ってもらえるようにすることをいいます。

IPO株は、株式市場でつく最初の値段(初値)が大きく値上がりする傾向があるため、「初値で売るだけで儲かる」と投資家に人気です。しかし、あまりの人気にほとんどの場合抽選になってしまいます。抽選に当たるかは基本的には「運」なので、根気よく申し込んでいる投資家も少なからずいます。

IPO株の取り扱い銘柄数は、証券会社により大きく違います。というのも、IPOで売り出される株を扱うのは、10社程度の「幹事証券」のみだからです。幹事証券は銘柄ごとに異なり、「A証券会社では5000株」「B証券会社では1万株」などという具合に売り出される株数が決まっています。また、幹事証券のなかでも中心的な役割を果たす「主幹事証券」では、他の幹事証券よりも多くのIPO株を売り出します。

したがって、IPO株を狙いたいならば、IPOの取り扱いが多い、幹事証券を多く務めている証券会社を選びましょう。主幹事証券を多数務めた実績のある証券会社ならなおいいですね。各証券会社のウェブサイトでは、過去のIPOの取り扱い実績が掲載されていますので、チェックしましょう。

複数の証券会社を組み合わせて使うのもあり

証券会社によって違いがある項目、証券会社を選ぶ際に決め手となりえるポイントを5つ紹介してきました。上でも少し触れましたが、いくつか実際に使ってみて、いちばん使いやすい、自分に合った証券会社を探すのがおすすめです。もっとも、証券会社によって強みは異なります。ですから、うまく証券会社を組み合わせることで、複数の証券会社の長所を生かして投資ができるでしょう。

たとえば、IPO投資をしたいのであれば、IPOの幹事証券の実績の多い証券会社を複数利用して、できるだけ申し込みを多くすれば、その分当選確率がアップします。IPO投資を手がける方の中には、十数社に口座を開設して、IPOの募集があるたびに熱心に応募している方もいます。

米国株への投資や経済圏のポイントを生かすために、メインの証券会社とは別に米国株・経済圏に強い証券会社を利用する、といった使い方もできます。

また、株式の積立はスマホ証券、投資信託の積立はネット証券という具合に使い分けることで、少額から長期・積立・分散投資ができます。

自分のしたい投資に合わせて、証券会社を選んでみてくださいね。

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