「天皇杯45位転落」強化の在り方、見直す契機に いちご一会とちぎ国体

長崎県の競技別獲得点数と順位

 下から3番目。長崎の現在地は、数字が何よりも物語っている。11日に閉幕した第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」。47都道府県が全競技の合計獲得点数で競う天皇杯(男女総合)順位で、長崎は45位に沈んだ。女子のみの皇后杯は最下位。天皇杯優勝、皇后杯2位だった2014年長崎がんばらんば国体からわずか8年。厳しい現実を突きつけられた。

■ 入賞なし過半数
 正式40競技中、過半数の22競技で入賞がなく、取れるはずだった入賞を落とした競技も多かった。得点配分が最も大きい陸上は、夏のインターハイに続いて少年勢の入賞がゼロ。成年勢のふるさと選手3人の入賞にとどまった。水泳も入賞者を出せないなど、各競技で予選落ちや初戦敗退が目立ち、最終盤まで1997年大阪国体以来となる最下位も見えていたのが実情だ。
 26位と健闘した前回の2019年茨城国体から獲得点数を増やしたのは、出場5人全員が入賞したカヌー(26点増)、地元国体以来8年ぶりに入賞した軟式野球(16点増)と成年男子のゴルフ(15点増)、成年が準優勝した相撲(6点増)、優勝者を出したライフル射撃(17点増)、少年男子5位のラグビー(28点増)など8競技。成年がV4を飾った銃剣道は前回未実施だったため、34点の純増となった。

出場した全選手が入賞したカヌー勢。ワイルドウオーター成年男子スプリントで難コースを果敢に攻める寺島(諫早市役所)=塩谷町、鬼怒川特設カヌー競技場

 茨城国体で大量194点をもたらしたソフトボールは140点の大幅減となったが、少年男子が3位と健闘した。バドミントン少年男子も過去最高の準優勝を果たした。いずれも優勝候補として大会に臨み、しっかりと結果を出した。

■ 九州で最下位に
 下位に沈んだ最大の要因は九州ブロック大会の不振だった。インターハイで活躍した競技の多くが敗退してしまった。夏に金メダルを手にした剣道少年男子は3枠の出場権を逃し、銅のソフトボール少年女子とホッケー少年女子は1枠の狭き門を突破できなかった。5位のなぎなた少年はチーム事情で九州ブロックに出場さえできなかった。
 国体は来年が鹿児島、再来年が佐賀、5年後が宮崎と九州での開催が続く。対象県はそれぞれ競技力向上に本腰を入れており、結果的に今年は九州ブロック突破が例年以上に厳しくなっていた。今大会、鹿児島は前回の15位から14位、佐賀は33位から21位、宮崎は41位から32位に浮上した。長崎は九州最下位だった。
 ただ、こうした外的要因で片付けられない部分も多い。特に痛かったのは少年女子で、入賞はわずか1人だった。ライフル射撃で中学3年生の森保詩乃(小江原中)が2種目入賞という目覚ましい活躍を見せたが、強化の柱とも言える高校年代が振るわなかった。少年種別は男子で結果を出した競技も、一部の熱意ある指導者たちの努力で体裁を保っていた感が否めなかった。

■ 試される本気度
 地元国体の財産を失ったとも言える結果が出た今大会。このまま“スポーツ弱小県”でいいのであれば、何も検証する必要はない。だが、夢や希望を持ってスポーツに励む子どもたち、地元で競技を続けたいという選手たちは、この現状をどう受け止めただろうか。選手の育成はもちろん、大前提となる指導者の育成や発掘、これらに継続性を持たせる基盤づくりを再考、実行する必要はあるはずだ。さらに言えば、即効性のある強化策や国体への貢献度に応じた支援のメリハリがあってもいいだろう。
 19年茨城国体の26位はソフトボール勢の大活躍でカムフラージュされていた部分があり、振り返れば18年福井国体も当時20年ぶりの40位台となる41位に沈んでいた。まずは長崎の立ち位置を真摯(しんし)に受け止め、足元を固めるところから始めてほしい。
 3年ぶりに開催された国体。各会場では地元の子どもたちが声援を送ったり、おもてなしブースで人と人とが交流したりと「ならでは」の光景が戻っていた。国体の意義、魅力、そして郷土を背負う責任をあらためて胸に刻み、悔しかった栃木国体をターニングポイントにできるか。県や各郡市、競技団体の本気度が試される。


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