背景に「詐欺被害回復」うたう違法ビジネス “詐欺狩り”? 70代男性 監禁不明事件

広島・海田町で男性が監禁され、その後、行方が分からなくなっている事件―。容疑者1人がいまだ逃走中の中、先週、3人の裁判が始まるという異例の展開を見せています。事件の背景に浮かぶのは、「詐欺被害回復」をうたう、違法なビジネスです。

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家森 亮 記者
「先週、始まった裁判では、事件に至るまでのいきさつが明らかにされ、行方不明の男性と5人の女、そして2人の男との関係性が見えてきました」

検察や女たちの証言による事件の概要は、こうです。県内に住む女5人は、海田町の男性に投資の運用による配当を得る目的でそれぞれ90万円から2000万円を預けていました。

しかし、配当が滞ったことに詐欺の可能性を疑い、男性に説明を求めます。

その男性との交渉の場に女たちは、2人の男に協力を依頼しました。▽住所不定の 今泉 俊太 被告(31)と、▽現在も逃走中の 伊藤 圭亮 容疑者です。

裁判で、検察は、2人を「債権回収屋」と呼んでいました。

2人について、女は…


「詐欺にあった人の味方をして、お金を取り返してくれる人」

裁判では、女たちが依頼したというグループ名を弁護士が明らかにしています。

そのグループ名を検索してみると…。

家森 亮 記者
「あっ、ありますね。返金があったというような…。これ、実績報告ですかね。『詐欺被害回復』『詐欺師情報発信』『なんでもDMに相談してください』などと書いてあります」

グループを “詐欺狩り” と表記する書き込みもありました。

2人は、果たしてどのような人物なのか…。

犯罪社会学に詳しい 広末 登 氏は…。

久留米大学 非常勤講師(ノンフィクション作家) 広末 登 氏
「反社会的勢力、いわゆる “半グレ” と呼ばれる人たちなのではと思います。今後、明らかになると思いますね、どういう属性の人たちなのかというのは」

広末氏によると、“半グレ” とは、定義があいまいながらも、暴力団ではない、組織的に犯罪を行うグループの総称です。特殊詐欺や違法薬物の売買などに関わるグループもあるとされます。

広末 登 氏
「常に新しい犯罪を考えているのが、半グレの犯罪なんです」

― “詐欺狩り” と聞いたことは?
「初めて聞きますが、『詐欺狩り』という “シノギ”(金を得るための手段)があるなら、これは非常に新しい形態のシノギだと思います」

「いわゆる被害回復をうたったもの。被害者がいるから自分たちはこういう行為をするんだと(正当化して)言えますよね。『あなた、詐欺じゃないんですか。訴えたら、あなたも捕まりますよ』と」

「おそらく(依頼者の)元本の回収だけでなく、プラス迷惑料・慰謝料、そういったものを奪って、シノギにしているのではないか。もちろん依頼者からも幾ばくかのお金はとると思います」

実際、裁判では、回収した額の4割を男らに支払うというやり取りがあったことも明かされました。

久留米大学 非常勤講師(ノンフィクション作家) 広末 登 氏
「つい頼りたくなるという心情は理解できないこともないが、ただ、あくまでそれは違法なサービスだと気が付いてほしい」

裁判では、▽男性が暴力を受けながら金の返済を求められる様子の音声記録の存在や、▽男性の行方について女が、「男2人が毛布にくるみ、車でどこかへ連れて行った」と説明した供述調書などが明らかにされています。

女たちが債権を回収してくれる「味方」だと思っていた2人…。警察は、2人を事件の主犯格とみていて、逃走中の伊藤容疑者の行方を今も追っています。

そして、今泉被告の初公判は、あす14日、開かれます。

行方不明になっている男性が女らに対して実際に「詐欺」をしていたかどうかについては、明らかではありません。ここまで分かっているのは、女らが詐欺を疑い、結果的に男2人に依頼をした…そして事件になったということ。

一見、「詐欺被害回復」という正当性があるようなことをうたっているが、そもそも違法ですし、事件に巻き込まれる危険性も高く、絶対にすべきでない依頼だった…といえます。

いずれにせよ、事件の全容解明には、逃走中のもう1人と、被害男性の行方を明らかにすることが不可欠となっています。

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