<金口木舌>憧れと抵抗の現在地

 ジーンズのオブジェは米国への憧れをうかがわせるが、破れた部分が血で染まっている。沖縄のアイデンティティーを表現し続けてきた県立芸大元教授の宮城明さんの作品だ。読谷村で8日に始まった個展を訪ねた

▼宮城さんは沖縄戦が終結した1945年に名護市で生まれた。多摩美術大を卒業後、米ニューヨークに渡った。ポップアートを学び、初期の作品は近年とは全く違う風合いだ

▼宮城さんが今回初めて展示したのは新基地建設が進む辺野古を描いた「ザン(ジュゴン)の海」。青い海と緑の藻場、サンゴの立体感など豊かな海を表現したキャンバスが広がるが、滑走路を表現した灰色の板が上段を覆う

▼海の作品はあえて避けてきた宮城さん。「社会的にも経済的にも追い詰められている沖縄の現実を見て」製作を決めた

▼仕掛けもある。上段は「軟弱地盤」「活断層」などと名付けた。いずれも新基地建設のハードルと指摘される。「完成は無理ですよという思いも込めた」。憧れと抵抗。宮城さんの心の変遷が沖縄の現在地を問い掛ける。

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