最長片道切符の旅

 総走行距離は10700.7キロ。かかった日数は24日間、乗車券の値段は9万5千円。1872年のきょう10月14日、東京・新橋-横浜間の29キロに初めて鉄道列車を走らせた当時の関係者たちは、150年後のこんな楽しみ方を想像していただろうか▲北海道の最北端・稚内を起点にして、同じ駅、同じ区間を通らない“一筆書き”をルールに、最も長い距離の切符で移動する「最長片道切符」の旅▲なるべくルートが長くなるよう、隣の隣の駅まで行くのにクネクネ遠回りして5時間-などということも時には起きるらしい。「鉄旅」の著作が愛され続ける宮脇俊三氏はこの旅の途中で丸2日間、目的地の九州に背を向けて走り「阿呆らしさもここまでくると、厳粛な趣を呈してくる」と記した▲さて-。新線の開通や路線の廃止で変遷を重ねてきた「最長」の終点駅が先月、本県の新大村駅に変わった。西九州新幹線開業で県内をループする新ルートが生まれたためで、解説は第1号の踏破者を伝えた4日の記事に詳しい▲「実は2番目の方が出発されたという情報が…」と教えてくれたのは「認定証」を発行する新大村駅観光案内所の女性職員。どんな人が、今ごろどの辺りを…声が弾んだ▲鉄道ファンの新しい“聖地”。本県の新名物に育ってくれるといい。(智)


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