「皿山人形浄瑠璃」 3年ぶり波佐見で鑑賞会 母娘の悲哀、情感豊かに

母娘の悲哀を人形の所作で表現した「傾城阿波の鳴門」=波佐見町折敷瀬郷、町総合文化会館

 新型コロナウイルスの影響で中止されていた郷土芸能「皿山人形浄瑠璃」の鑑賞会が9日、長崎県東彼波佐見町の町総合文化会館で開かれた。約150人が3年ぶりに伝統芸能を楽しんだ。
 人形浄瑠璃は語り手の「太夫」、伴奏の「三味線弾き」、黒子姿で人形を動かす「人形遣い」の三位一体で構成。毎年8月21日、皿山大神宮の夏越祭で奉納されるが、新型コロナ感染拡大で中止が続いていた。
 大阪の文楽座から三味線の野澤錦糸さんと門下生が駆けつけ、皿山人形浄瑠璃保存会「美玉座」(15人)と共演。諸国を巡る娘と再会を果たすも、訳あって名乗れない母の悲哀を描いた「傾城阿波(けいせいあわ)の鳴門(なると) 巡礼歌の段」など2演目を情感豊かに披露した。
 保存会の福田学会長(66)は、人形遣いを始め33年。「コロナで思うように稽古ができなかったが、久々の舞台は達成感があった。町の人に喜んでもらえた」と話した。
 人形浄瑠璃は12月上旬に開く陶磁器イベント「皿山器替えまつり」でも披露される。町教委によると、県内では皿山郷と東彼杵町千綿地区に伝承されている。皿山では1732(享保17)年の大飢饉(ききん)で大村藩内を巡業。木戸銭代わりに食糧を持ち帰ったのが起源とされる。県指定の無形民俗文化財。

© 株式会社長崎新聞社