福井の元高校球児がもう一つの夢、大相撲に挑む…湊川親方が後押し受け 大学中退し10月18日新弟子検査「強くなって両親に恩返しを」

大相撲放駒部屋の力士としてデビューを目指す鳥山優太郎さん=10月15日、東京都足立区

 白球に別れを告げ、土俵に人生を懸ける福井の若者がいる。甲子園を目指した元高校球児で、大学でも野球を続けたが「興味があった大相撲に挑戦したい」と一念発起。大学を中退し今秋から、放駒部屋で稽古を重ねている。10月18日の大相撲九州場所新弟子検査に臨み、新たな夢、力士としてのデビューを目指す。

 福井県福井市出身の鳥山優太郎さん(19)。小学3年から野球に打ち込み、羽水高校時代は長打力のある4番打者として活躍。2年生で出場した秋の県大会は4強入り。複数の大学野球部から声が掛かり、スポーツ推薦で名古屋商科大学へ進学した。

⇒福井県出身の舞蹴が幕下に復帰し自己最高位

 一方「中学生の時から大相撲にも興味があった」。きっかけは稀勢の里が19年ぶりの日本出身横綱となった2017年。列島が歓喜に沸くニュースに触れ、大相撲中継を見始めた。高校生になると、立ち合いの駆け引きを楽しむなど「より深く見るようになった」。ユーチューブで白鵬、朝青龍、貴乃花らの過去の取組を視聴し、横綱へのあこがれを抱いた。

 転機は今年7月。同じく相撲好きの野球部の友人と大相撲名古屋場所を観戦した。初めて力士のぶつかり合いを目の当たりにし、伝統世界の独特な雰囲気を体感。角界への思いを強くし、両親に相談した。父親の知人を通じ福井県出身の湊川親方(元小結・大徹)と放駒親方(元関脇・玉乃島)と知り合い、8月に放駒部屋で10日間の体験入門。また宮城野部屋も訪問し、あこがれの存在で親方の元横綱白鵬と直接話をした。「もっと強くなりたいという気持ち、相撲に対する思いがどんどん大きくなった」。大銀杏を結うことが新たな夢となった。

 19歳の挑戦に両親の反応は「二つ返事ではなかった」。周囲から「大学卒業後でもいいのでは」との意見も出た。それでも「ひと場所でも早く経験を積みたい。絶対に強くなるし努力する」と説得。両親に会うために来福してくれた放駒親方とおかみさん、親身になってくれた同郷の湊川親方の存在が後押しとなり、9月に放駒部屋に行くことを決断した。

 稽古を始めて1カ月。相撲の基礎を体に覚え込ませる日々は「すごく充実している」。身長1メートル92と体格に恵まれる。体重は8月から約15キロ増え110キロになったが、まだまだ増やす必要がある。放駒親方は体格面での素質を評価した上で「心が純粋で努力家。向上心があり、ここまでやる気がある子は珍しい。うちで育ててみたいと思った」と期待を込める。

 野球のトレーニングで培った背筋力やスピードを生かし、四つ相撲で勝負したいと展望を描く19歳は、来年1月の初場所での序ノ口優勝を目標に掲げる。「声を掛けてくれた師匠、応援してくれる両親には感謝しかない。強くなって恩返ししたい」。その言葉に迷いはない。

 ■新弟子検査 相撲部屋に入門を希望してきた力士志望者に対し、日本相撲協会が場所前に行う検査。身長167センチ、体重67キロ以上の体格検査と健康診断があり、合格すれば入門が許され、力士として認められる。福井県出身の郷土力士は現在、三段目の舞蹴(福井市出身、二子山部屋)と序二段の越ノ龍(坂井市出身、藤島部屋)の2人。

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