<南風>次世代と学びあう

 大学などの後期の授業が始まった。大好きな仕事の一つである。大学で教える仕事を始めた駆け出しの頃は、クラスに同級生や先輩もいて、役割の転換にうまく適応できていなかったと思う。私は長い学生生活を続けているような状況だったし、本当にひよっこで、指導教官に「5年はしっかり修行しなさい」と研究室においていただいていた。

 そんな私が、恩師たちの現場に仲間入りし、先生と呼ばれるようになったのだ。初めての授業の日を今も鮮明に覚えている。大学に入学した年、学外でサーフィンの面白さを教えてくれた先輩が、何度目かの春のサーフィン休暇を終え、社会人になるよ、と私のクラスに座っていた。

 この状況を受けて立てるのか、全く自信のないまま高い熱量だけを頼りに、思いつく面白いことは何でも取り入れた。この震えるようなワクワク感を、ずっと覚えていようと心に決めた。月日は流れ、最初の講義の日から四半世紀以上がたち、今や担当クラスの学生たちはわが子と同年代のかわいい子ども達となった。コロナ禍で対面できない日々を超え、ようやく対面授業が始まり、初めての授業と初心を思い出した。

 子育て初期の、時間に追われる生活の中でインプットが足りないと焦ったことや、臨床現場で命と向き合い学んだことを、どう彼らに伝えたらいいか思いあぐねたことが、今の私をつくっていることに気づいた。

 20代半ばでこの仕事を始めたときのチャレンジ精神も、焦りや迷いも全て、目の前のこの人たちと分かち合おう。そして今、中年期を生きる私が見ていること、考えていることを伝え、そして若い世代から教わり、双方向で学び合っていきたいと思っている。次世代と学び合える貴重な機会に感謝し、新しい穏やかなワクワク感を大切にしつつ楽しく取り組んでいきたい。

(金武育子、沖縄発達支援研究センター代表)

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